外国人ヘルパー 訪問介護の苦境打開できるか
読売新聞 / 2024年8月22日 5時0分
高齢者の自宅で生活をサポートする介護人材が不足している。高齢者や家族が安心して暮らすためには、外国人材の力を借りることが避けられない時代になってきた。
厚生労働省は、外国人の訪問介護ヘルパーを増やすため、来年度にも制度を改正すると決めた。
現在、外国人がヘルパーになるには介護福祉士の国家資格が必要だが、有資格者は少ない。今後は介護福祉士の資格がなくても、「特定技能」などの在留資格で訪問介護に携われるようにする。
訪問介護は、身の回りのことをするのが難しい要介護者の自宅をヘルパーが訪れ、入浴や食事などを手助けする介護保険のサービスだ。日本は人口の3割が65歳以上で、単身高齢者も多い。訪問介護の需要は高まっている。
一方、介護業界は人手不足が深刻だ。特にきめ細かい対応が必要な訪問介護は担い手が少なく、求職者1人に対して15社から応募がある状況になっている。外国人の働き手を増やし、サービスの安定化を目指すのは現実的だろう。
とはいえ、単に日本人の穴埋めとして外国人を活用するという発想では、制度は立ちゆかなくなる。サービスを受ける側だけでなく、介護にあたる外国人も不安なく働ける環境を整える必要がある。
利用者の自宅を訪れ、1対1でケアにあたる訪問介護は、日本語での意思疎通が不可欠だ。ヘルパーには、利用者の健康状態や生活状況を把握し、緊急時には責任者にすぐ連絡するといった臨機応変な対応も求められる。
外国人がこうしたスキルを身につけられるよう、厚労省は十分な研修体制を整えねばならない。
ヘルパーを雇用する介護事業者側は、外国人が現場の対応に迷った時に、すぐ相談できる窓口を設けることが重要だ。外国人が訪問介護を担うことについて、あらかじめ利用者やその家族に丁寧に説明しておくことも大切となる。
訪問介護は、責任や負担が重いわりに賃金が低く、こうした処遇の悪さが人手不足を加速させている。さらに今年度は介護保険で賄われている事業者への報酬も引き下げられた。事業者は中小が多く、経営は厳しさを増している。
人材不足の本質的な解決には、ヘルパーの処遇を改め、日本人、外国人を問わず、魅力的な業界にしていくことが欠かせない。
国は訪問介護の現場に何が欠けているのか、多角的に検証すべきだ。介護報酬や保険料のあり方も含めて検討する必要がある。
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