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難病で「甲子園」断たれた元球児、パリパラリンピック「金」目指す…「ゴールボールで全力投球」

読売新聞 / 2024年8月23日 13時18分

力強いフォームで投球する鳥居選手(7月3日、埼玉県所沢市で)=村松魁成撮影

 目の難病で甲子園の夢を断たれた元高校球児が、28日開幕のパリ・パラリンピックで世界一を目指す。ゴールボールで初出場する鳥居 陽生 はるき選手(20)。大舞台を目前に控え、「限界を超えるくらいの全力投球を見せたい」と意気込んでいる。(横浜支局 佐藤官弘、佐野真一)

 神奈川県小田原市出身。幼稚園に通う頃には野球を始め、小学6年で110キロの速球を投げ、周囲を驚かせた。中学卒業後は志望通り、地元の強豪・相洋高校に進んだ。

 入学した2020年の夏、甲子園大会はコロナ禍で中止となったが、同校は県の独自大会で準優勝した。秋に新チームが発足すると、鳥居選手も期待の投手として、背番号「22」を与えられた。

 異変はまもなく起きた。捕手のサインがぼやけ、キャッチボールの球が見えづらくなった。翌年1月、医師から告げられた病名は、視野欠損などを起こすレーベル遺伝性視神経症。国指定の難病だった。

 数日後、野球部の監督室を訪れ、退部を申し出た。だが、高橋伸明監督の答えは意外だった。「鳥居が頑張っている姿にチームが勇気づけられる。3年間、一緒に頑張ろう」。チームに残れることがうれしく、グラウンド整備やボール拾いなど、率先して裏方仕事に取り組んだ。

 転機は2年の夏。野球部のトレーナーから、ゴールボールという視覚障害者の競技があることを教わった。体験会に参加してみると、ダイナミックな投球と、声をかけ合って心を一つにしてプレーする選手たちの姿にひかれた。

 「やるからには日本代表に入り、パラリンピックに出る」と猛練習を開始。野球部のウェートトレーニングで、重いボールを自在に扱えるよう体幹を鍛えた。投手の経験はゴールボールにも役立ち、体を速くひねって、力強い球を投げられるようになった。高校卒業後も、 鍼灸 しんきゅうなどの資格を目指し、国立障害者リハビリテーションセンターで学びながら練習を重ね、昨年秋、日本代表に選ばれた。

 男子日本代表は、前回の21年東京大会に開催国枠で初出場し、5位と健闘。パリ大会はメダル獲得を目指す。野球部の2学年下の後輩で、今夏の県大会でエースナンバーを背負った中島翔人投手(3年)は「どんな状況でも諦めない鳥居さんの姿を今も励みにしている。世界の舞台で活躍してほしい」とエールを送る。

 「野球部の仲間や恩師のおかげで前を向けた。恩返しは、金メダルを取ること以外にない」。磨き上げてきた攻めの投球で、世界を驚かせたいと燃えている。

◆ゴールボール=バレーボールと同じ広さのコートで、1チーム3人の視覚障害選手が目隠しを着用し、鈴の入ったバスケットボール大のボール(重さ1・25キロ)を転がすように投げ合い、相手ゴールを狙う。守備側は音を頼りにボールの位置を予測し、寝転んで止める。

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