関東一・エース坂井遼がタイブレイクで押し出し、無失点途切れるも「僕たちらしさは出し切れた」「悔いはない」

１０回、押し出し四球で先制を許し肩を落とす関東一の坂井（左）（２３日）＝飯島啓太撮影

　　第１０６回全国高校野球選手権大会の決勝が２３日、甲子園球場（兵庫県西宮市）で行われ、ともに初優勝を目指した京都国際（京都）がタイブレイクに入った延長で関東一（東東京）との競り合いを制し、甲子園開場１００年を迎えた節目の大会で深紅の優勝旗を手にした。京都勢としては１９５６年の平安（現・龍谷大平安）以来６８年ぶりの全国制覇。京都国際は春夏通じて甲子園で初めて頂点に立った。東京勢として２０１１年の日大三（西東京）以来の優勝を狙った関東一は、堅守で終盤勝負に持ち込んだが、あと一歩及ばなかった。

京都国際２―１関東一

　頂点には届かず、自らの無失点記録も途切れた。それでも、関東一のエース坂井の表情は晴れやかだった。「僕たちらしさは出し切れた。悔いはない」

　無失点と粘投した先発の畠中から七回にマウンドを引き継いだ。出だしは好調。２イニングを３人で片付けたが、徐々に「力みが抑えられなくなった」と球が浮き出す。無死一、二塁から始まる延長タイブレイクの十回。先頭に安打を許して満塁とされ、痛恨の押し出し四球で先取点を与えて降板。それでも投手陣は全５試合を２失点以内に抑え、米沢監督は「精いっぱいやってくれた」とたたえた。

　野手陣も好守でチームを支え、打力の弱さをカバーした。遊撃の市川は外野へ抜けそうな当たりやバウンドが難しいゴロを好捕し、一塁への正確な送球で何度もアウトにした。四回一死一塁では捕手の熊谷が鋭いけん制で走者をタッチアウト。守備のミスで初戦敗退した今春の選抜大会以降、追い求めた「攻める守備」は随所で見せた。熊谷は言う。「最後は打力で差が出たけど、守備は武器になると示せた」。今大会、失策はたった三つだった。

　決勝前夜、米沢監督は選手たちにこう伝えた。「ここまで来たのは偶然じゃない」。勝利の女神こそほほ笑まなかったが、息が詰まるような接戦で見せた堅い守りは、確かに全国にとどろいた。（後藤静華）

４番サヨナラ機で凡退

　九回のサヨナラの好機で中飛に終わった関東一の４番高橋は「詰めの甘さが出た。相手が一枚上手だった」と潔かった。準々決勝でチーム唯一の本塁打を放つなど注目のスラッガーとしての 片鱗 （へんりん）は示しつつも厳しいマークに打率１割台と苦しんだ今大会。選抜で初戦敗退して以降はバラバラになりかけたチームをまとめ、「負けたら自分の責任」と言い続けてきた主将が、ようやく重い荷物を下ろした。

関東一・米沢監督「投手中心に守備のチームで戦えた。やってきたことは間違いじゃなかった。あと一歩何が届かなかったのか。しっかり考えて、その一歩を出せるようにしたい」