埼玉県立高校の「ハートフル水族館」、地域で愛され20年…平日のみ公開でも年間2000人訪問
読売新聞 / 2024年8月25日 15時15分
埼玉県立桶川西高校の校内水族館「ハートフル桶西水族館」が今年6月で一般公開の開始から20年を迎えた。国内外の淡水魚や両生類、
年2000人来館
「肺魚の仲間であるプロトプテルス・エチオピクスは、1時間から30分に1回くらい空気を吸いに水面に上がってきます」
記者が7月上旬に学校を訪ねると、水槽の前で科学部の生徒が丁寧に解説してくれた。
同校2階の生物室は約40個の水槽で埋め尽くされている。肺魚の近くに、両生類のイモリや爬虫類のヤモリなどが展示され、生物の進化の過程が学べるように工夫されている。
自然環境が脅かされる外来種の問題にも関心を持ってもらうため、日本固有種のニゴイなどのそばに、許可を得て飼育している特定外来生物ブルーギルを展示するなどしている。
同館は原則、平日のみの公開だが、年間に約2000人が訪れる。これまでの来館者数は延べ3万5000人を超える。
「運動部」のよう
水族館ができたきっかけは、元教諭で部活動指導員の小熊一雄さん(68)が、前任校で育てていた30種300匹の魚を異動時に持ち込んだことだった。当時の校長から「水槽ごと持ってきてほしい」と頼まれたのだという。
魚好きの生徒から「飼育を手伝うから部活にしてほしい」との声があがり、休部状態だった科学部で2003年から飼育を開始。地域から要望を受け、04年からは一般公開もするようになった。
今の科学部員は11人。生き物の飼育には定期試験や長期休暇は関係ない。元日以外は毎日、部員か教員が水槽の掃除や水替えを行っている。来校者へのガイドも大切な仕事だ。新入部員は先輩から「生き物ごとの個性も話せるように」と指導を受けている。
「ここの科学部は運動部ぐらい厳しい」と小熊さん。科学部部長の3年、細野祥生さんは「文化系だと思って入部したので最初はハードだったが、来館した子どもたちがガイドを楽しんでくれるなど、ここだけのやりがいがある」と語る。実際、来館者からは「生徒の案内が良かった」「珍しい魚をたくさん見られた」といった感想が寄せられているという。
出前水族館も
校内水族館では、保護された生き物も飼育する。さいたま市の道路で見つかったスッポンも育てあげ、今ではすっかり大きくなった。
近年は校外への「出前水族館」にも力を入れ、生き物と触れ合う機会を増やしている。来館が難しい人のために高齢者施設などを訪問したといい、2代目館長の奥村崇生教諭は「幅広い年代の人と触れ合えるため、生徒のコミュニケーション能力の向上にもつながる。今後も学校の特色を生かして地域貢献を続けたい」と話している。
一般公開は授業日は月・水・金曜の午後3時半~5時半、長期休業中は平日午前8時半~午後4時50分。予約不要。
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