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中国の邦人起訴 不信感を高める不透明な司法

読売新聞 / 2024年8月25日 5時0分

 容疑者として起訴しながら容疑の中身さえ説明しようとしない。それで法治国家と言えるのだろうか。邦人が理不尽に拘束されている現状は、断じて容認できない。

 中国当局に昨年3月から拘束されていたアステラス製薬社員の日本人男性が、スパイ罪で起訴された。男性は以前、中国に進出した日系企業でつくる「中国日本商会」の副会長も務めていただけに、企業関係者の衝撃は大きい。

 中国外務省報道官は、男性の拘束について説明を拒み続け、起訴後の記者会見でも「中国は法治国家だ」と強調するばかりで、起訴内容を明かさなかった。

 中国司法の密室性は、国際的にも批判されている。男性のどの行動がスパイ行為にあたるのか、具体的に示すべきだ。少なくとも起訴内容の公表は、裁判公開を原則とする法治国家の基本だ。

 中国の習近平政権が「国家の安全」を最優先するとして、2014年に反スパイ法を導入して以降、スパイ容疑などで身柄を拘束された邦人は計17人に上る。うち5人はいまだに とらわれの身だ。

 岸田首相は昨年11月の日中首脳会談で、拘束中の全邦人の早期解放を習国家主席に直接求めた。

 前任と現職の駐中国日本大使もそれぞれアステラス製薬の男性と面会を行った。大使館トップによる前例のない対応で、日本が事態を重視していることを示した。

 中国は、日本の早期解放の要請を無視している。男性の起訴で、拘束の長期化は避けられない見通しとなった。政府は解放に向けてあらゆる手を尽くすべきだ。

 また、中国では7月から、スパイ摘発を強化するため、当局者が身分証を示すだけで個人のパソコンや携帯電話を調べられる措置を実施し始めた。これでは中国と安心してビジネスなどできない。

 外国企業の23年の対中直接投資は前年から8割強減った。中国経済の停滞は、「国家の安全」を過度に重視する習政権の方針に一因があるのではないか。

 学術交流も滞っている。中国の政治や軍事を専門とする日本人研究者の多くが、拘束への懸念から訪中を控えているためだ。

 日本在住の中国人学者が中国に一時帰国した際、消息不明となる事案も複数起きている。これについても中国からの説明はない。

 一連の事案が、日中の相互理解を妨げ、不信感を高めている。こうした状況が続けば中国の国益を損ねることを認識し、対応を改めるよう、習氏に求めたい。

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