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八代海で赤潮猛威、カンパチやシマアジなど56万匹・13億円被害…養殖業者ら対応模索

読売新聞 / 2024年8月25日 11時54分

赤潮の検査をするため海水を採取する浜さん

 八代海で赤潮が猛威を振るっている。今季はカンパチやシマアジなど56万匹以上が死に、熊本県内の漁業被害は13億円、4年間では49億円を超えた。沿岸3市町では、養殖業者がグループをつくり、赤潮の発生情報を互いに共有することで対応を早める試みも始めた。被害を抑えるためには何が必要なのか、漁業の現場を訪ねた。

「出荷間近の魚が…」

 「はっきり色が見えなくても、ここら辺に赤潮があるんですよ」。7日、穏やかに見えた天草市楠浦町沖の養殖場で、養殖業を営む浜大吾さん(48)が海水をくみ上げた。

 明らかな着色はない。しかし、顕微鏡越しに見えるものを映したモニターを事務所で見せてもらうと、有害プランクトン「カレニア ミキモトイ」が確認できた。

 赤潮は、海水中の植物プランクトンが急増して発生する。上天草市沖では5月末、1種類の有害プランクトンの発生量が基準値を超え、県は今季初めての赤潮警報を発令。発令対象は6月までに計4種類に増え、20日に全て解除された。56万7225匹が死に、被害額は13億3619万円(7日時点)に上った。

 浜さんも養殖のブリ4500匹、マダイ600匹、シマアジ30匹が被害を受けた。「出荷間近の魚がいなくなった。餌代も高騰しているのに」と肩を落とす。

 被害は深刻化している。2021年以降、4年連続で発生しており、22年の被害額は19億6500万円に達し、00年の40億1400万円に次ぐ規模となった。県水産研究センターは要因として、▽赤潮の原因である植物プランクトンを捕食する動物プランクトンや二枚貝の減少▽有害プランクトンが増殖しやすい25度前後に海水温が上昇――などを指摘した。

 赤潮をなくす抜本的な対策はない。現場では、餌を与えずに魚のえらが傷つくのを防ぐ「餌止め」、深い養殖網にして魚の逃げ場をつくる「足し網」のほか、有害プランクトンの駆除剤を投入している。

 餌止めは魚の体力を低下させて死にやすくしてしまう。足し網は、水深が浅い場所や海流が強い海域では難しい。県は一定の駆除剤について購入費の全額を、魚の処理費の3分の1を助成しているが、浜さんは「半年先が見えない。このままでは来年も被害が出る」と頭を抱える。

 情報共有の取り組みは6月から、天草市と上天草市、津奈木町の養殖業者が始めた。各漁業者が採取した海水を顕微鏡で確認し、プランクトンの状況を無料通信アプリ「LINE」(ライン)でほかの業者や県と共有する取り組み。赤潮の広がり方をつぶさに観察できるため、迅速な対応が可能になったという。

 県海水養殖漁協は今後、顕微鏡での確認を人工知能(AI)で自動化し、漁業者の負担軽減を図る計画を立てる。国立研究開発法人「水産研究・教育機構」の水産技術研究所(長崎市)は、赤潮に耐性を持つブリの実用化を目指す。有害プランクトンを入れた水槽でブリの耐性を調べる実験では、通常個体の生存率が25%に対し、耐性を持つ親から生まれた個体は42%だったという。

 センターの鮫島守次長は「来年も被害が出る可能性は高いが、指をくわえて見ているわけにはいかない。被害が少なくなるように突破口を見つけたい」と話した。

疲弊する漁業者、支援策検討を

 相次ぐ被害で疲弊した漁業者から、「なぜ養殖をやっているのか。自分の存在意義が分からなくなる」との声を聞いた。研究で抜本的な解決策を確立することは重要だが、全員が待てる状況ではない。

 一番の対策は魚を赤潮に触れさせないことだ。「足し網」はその方法の一つだが、設備に対する支援はないという。国と県は新たな支援策を検討してほしい。(石原圭介)

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