介護ベッドなど福祉用具の事故情報、年内にもデータベース化…現在は集約する仕組みなし
読売新聞 / 2024年8月26日 5時0分
厚生労働省は、電動の車いすや介護ベッドなどの福祉用具を使用中に起きた死傷事故の件数や概要、要因などについて、データベース(DB)を構築し、公表する方針を決めた。自治体や消費者庁などに集まる情報を一元化し、高齢者や介護職員の安全な利用につなげ、メーカーの製品開発にも活用してもらう狙いだ。年内の運用開始を目指す。
独立行政法人「製品評価技術基盤機構(NITE)」によると、介護施設や自宅などで使われる電動車いすやシニアカー(ハンドル付き電動車いす)、介護ベッドでの死傷事故は、2022年までの10年間に計86件確認されている。「踏切で脱輪し、立ち往生した」「ベッドと柵の間に首が挟まれた」といったケースで、メーカーなどから報告を受けたものだ。
消費者庁は、メーカーなどが把握した死傷事故について報告を受け、ウェブサイトで公表している。
一方、市区町村は、介護保険法の運営基準に基づき、福祉用具を扱う事業者や特別養護老人ホームなどから、現場で起きた事故の報告を受けるが、国に報告する仕組みはない。集約先がバラバラのため、どんな福祉用具で事故が何件起きているのか実態は分かっていない。
新たに構築するDBでは、厚労省が作成した事故報告書を使って、自治体から任意に提出してもらう情報や、消費者庁が収集した事故情報などを集約し、活用する。公表するデータは、自宅と施設のそれぞれの事故件数、福祉用具の種類や使用場面ごとの事故要因の分析――などを想定する。
福祉用具を利用する高齢者は22年度に約367万人と、12年度の1・7倍となり、高齢化で今後も増える見通しだ。厚労省は「事故情報を収集し、注意を呼びかける必要がある」(高齢者支援課)と判断した。メーカーが製品の安全性向上に役立てることも期待している。
DBの詳細な設計や公表する内容は、厚労省の委託を受けた公益財団法人「テクノエイド協会」(東京都)の有識者会議で検討を進める。
国際医療福祉大の東畠弘子教授(福祉支援工学)は「体の動きや判断力が衰えた高齢者が利用する福祉用具の安全性を高めるため、事故情報の一元化は重要だ。利用者や事業者に情報が確実に届くように、発信の仕組みも整えてほしい」と話している。
◆福祉用具=介護保険制度で、つえや歩行器、移動用リフト、手すりなど13種類を原則1割の自己負担でレンタルできる。専門相談員が定期点検を行う。ポータブルトイレなど再利用がためらわれるものは、原則1割の自己負担で購入できる。
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