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「少女人身売買と性被害」長谷川まり子さん 自ら団体を設立、支援をする中で

読売新聞 / 2024年8月30日 15時30分

 インド、ネパールの人身売買の実態に迫り、新潮ドキュメント賞を受賞した『少女売買』(2007年)から17年。ノンフィクションライターで、両国の女性を支援するNPO代表でもある著者が、再び人身売買の現場を伝える。

 インドでは約200万人の女性が性産業に従事し、多くが人身売買の被害者とされる。著者は1992年から同国を度々訪れ、現実を知った。インドやネパールの農村の少女らが「良い仕事がある」とだまされ、インドの売春宿に売られる。中には10歳未満の少女もいる。「子どもが不衛生な環境で1日に何十人もの客を、数百円で取らされている。ショックでした」

 売春宿から少女らを救出し、社会復帰を支援するNGOは現地に複数ある。取材対象だった団体の活動に著者もやがて関与するようになる。97年には自ら団体を設立した。「劣悪な環境から生きて帰ってきた少女たちに敬意を抱いた。高い所から見物するような支援はしたくなかった」

 本作は『少女売買』の続編に位置づけられ、少女らやNGO活動のその後を追う。明らかになるのは、強制的な売春による傷は想像以上に深いということだ。支援施設で優等生として暮らし、日本でも講演した女性が、周囲を裏切り、行方をくらませる。そして、少女たちの苦難は子どもの世代にも影響を与える。

著者の葛藤がにじむ一方、希望の光も

 理不尽さへの怒りが前面に出た前作に比べ、本作は活動の限界や、著者の葛藤がにじむ。「27年も活動を続けて、なぜ人身売買はなくならないのか。なぜ女性たちは再び道を踏み外してしまうのか。私自身が総括したかった」

 繰り返されるのが、心理的なサポートの重要性だ。少女たちの経験はページをめくる手が重くなるほど悲惨だが、始まった新たな取り組みに、希望の光が差す。(泉町書房、1980円)野口恵里花

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