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酷暑で被災家屋の片付け、ボランティアは「ヒーロー」…常連の男性「ここでしか得られないものがある」

読売新聞 / 2024年9月1日 14時29分

家財道具をトラックに積み込む藤本さん(左)らボランティア(8月17日、穴水町で)

 真夏の強烈な日差しがさんさんと降り注ぐ。日陰に置かれた温度計の表示は34・9度。石川県穴水町の山あいにある古民家で8月17日昼、町社会福祉協議会のボランティアセンターから派遣された男女3人が家財道具を運び出していた。

 「これ重い。ここに置きます」。ベビーベッドを運んできた仲間が、藤本忠義さん(49)に声をかける。「はいよー」と応じた藤本さんはぐっと力を込め、トラックの荷台にベッドを積み上げた。

 80歳代の女性が独りで暮らしていた家は中規模半壊と判定され、公費解体を申請中だ。建物は解体前にできるだけ空にする決まりがある。女性の娘で名古屋市に住む竹野順子さん(59)は、生家に残された大量の家財を前に途方に暮れた。

 町のホームページには「自身で運べない方はボラセンに相談を」とあった。依頼すると、8月上旬とこの日の2日間で藤本さんらボランティアが回収し、災害ごみの仮置き場に運んでくれた。

 立ち会った竹野さんは、汗だくになりながら黙々と作業をする姿を見て「ヒーローみたい」と思った。

 ボラセンは1月10日の開設以来、被災家屋の片づけや災害ごみの運搬を活動の柱としている。大型連休は連日100人を超すボランティアが現地入りした。8月に入っても多い日は80人が駆けつける。

 21日時点で、町に寄せられた公費解体の申請は2285件に上る。このうち解体が完了したのは375件だ。高齢者や遠方に避難している被災者も多い。被災家屋の片づけは「ボランティアの力なしには進まない」(町社協)のが実情だ。

 藤本さんはボラセンの「常連さん」の一人で、普段は名古屋市在住の会社員。東日本大震災や豪雨の被災地でも活動した経験がある。穴水での活動日数は2月中旬に初めて訪れて以来、55日に及ぶ。

 盆休みは少し長く滞在できたが、いつもは強行軍だ。金曜の夕方に仕事を終え、自家用車で4時間以上かけて穴水に移動する。丸々2日間依頼をこなし、日曜の夕に帰路につく。

 体力的には当然きつい。それでも、「ここでしか得られないものがある」と言う。町の人たちがいつも笑顔と感謝の言葉を向けてくれる。町社協の職員とは「ただいま」「おかえり」と冗談交じりに言い交わす仲になった。「また会いたい。力になりたい」という気持ちが自然とわき上がる。

 古民家は2時間ほどですっかり片づいた。「ありがとう」と竹野さんが頭を下げると、藤本さんは「こちらこそ」と笑顔で返した。(中川慎之介)

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