「戦禍のウクライナ勢や米国勢の強化策にも注目」…日本パラリンピック委員会・河合純一委員長に聞く
読売新聞 / 2024年8月28日 19時4分
日本パラリンピック委員会(JPC)の河合純一委員長(49)が読売新聞のインタビューに応じ、パリ・パラリンピックに臨む日本勢の活躍や大会の盛り上がりへの期待感などを語った。(聞き手・畔川吉永)
自身が日本代表選手団長を務めた前回2021年の東京大会は、新型コロナウイルスの影響で原則無観客で行われた。「大会自体はしっかりとしたオペレーションだったが、観客がいなかったのは悔しかった。パリ五輪では大歓声の中で選手が活躍している様子を見て、うれしかった」とし、「障害者スポーツが定着している欧州で行われる。チケットが売れていると聞いているし、世界最大のパラスポーツの祭典ならではの雰囲気になってほしい」と期待する。
日本選手の成績や結果は大切だが、一方で他の国・地域の取り組み方も学びたいという。「視覚障害の競技・種目で活躍するウズベキスタンや、戦禍の中でも結果を出しているウクライナなどがどういう戦略を立てているかに興味がある」と河合氏。「地元パラの開催を控える米国や豪州の強化策も気になる。豪州はタレント発掘の部分で元々、我々が参考にしている。今回、国の『ジャパン・ライジング・スター(J―STAR)・プロジェクト』出身者は8人だったが、豪州にも似たシステムがあり、東京大会では代表の数割がそこから育った選手だったという。日本のヒントになるものが必ずあるはずだ」
パリ五輪では選手らに対してSNSなどで悪質な中傷が相次ぎ、日本オリンピック委員会が大会中に緊急声明を出す事態となった。「パラでも研修などを通じて、SNSから少し距離を置くよう選手に提案することもあるが、情報のすべてをブロックはできない。選手団本部が競技団体などと連携し、選手の尊厳を守ることに努めたい」
選手の心のケアという点で今回、JPCは選手村内の日本選手団の棟に初めてリラックスルームを設置した。河合氏のアドバイスで視覚障害者向けに、手で触って数字や色が分かるトランプやオセロゲームも置いてある。「豪州も以前(エスプレッソなどをいれる専門の)『バリスタ』を連れてきたと聞いた。日本も選手が試合以外の時間は少しでもリラックスできる雰囲気を作りたい」。元選手らしく、細やかな気配りも忘れない。
かわい・じゅんいち 1975年4月19日生まれ。競泳(視覚障害)で2012年ロンドンまで6大会連続でパラリンピックに出場し、金5個を含む日本選手最多の21個のメダルを獲得した。16年に国際パラリンピック委員会(IPC)殿堂入りを果たし、20年1月からJPC委員長。21年夏季東京、22年冬季北京とパラリンピック2大会連続で日本代表選手団長を務めた。
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