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海外配信大手と競争「映像商品をABEMAなどに販売」「コンサート興行などエンタメ事業も強化」…WOWOW・山本均社長

読売新聞 / 2024年9月2日 16時37分

WOWOWの山本社長(東京都港区で)

 WOWOWは、初の民間衛星放送会社として、1991年に開局した。映画やドラマ、スポーツ中継といった質の高い放送番組の提供を強みとして、視聴者を獲得してきた。インターネットの動画配信サービスの登場で、ビジネスモデルの転換が求められている。山本均社長に話を聞いた。(聞き手・木瀬武)

海外事業者参入で環境一変

 ――開局以来、初の生え抜き社長になった。

 「開局当時は旧郵政省出身の社長が続き、その後は基本的に株主から来た方が社長を務めた。ようやくプロパーの社長となる。5年連続で加入者が純減しており、減収減益が続いている。社長になってうれしいというよりも、本当に大変な時に引き受けたという気持ちだ。なんとしても、WOWOWを再び成長軌道に乗せて、未来につないでいかないといけない。責任が重い役割だ。自分がやるしかない」

 ――動画配信大手が市場を席巻しており、今はどんな競争環境にあるのか。

 「海外の動画配信事業者が日本市場に参入して、環境は一変した。放送は免許制なので、国内ビジネスだ。衛星放送は全国同じ波を使っており、地上波よりも効率がいい。WOWOWはキー局が強く、無料放送が当たり前の中で、有料放送としてトップランナーだった。

 これが多チャンネル時代になり、ハードも進化してコンテンツが戦いの中心になった。オリジナルドラマを作り、音楽ライブを流し、スポーツ放送を独占する。

 グローバルな動画配信事業者が来て、まったく変わってしまった。全世界が相手なので、先方はヒト、モノ、カネが違う。巨額の資金でスポーツ中継の放映権を取ってしまう。映画も何万本もある中から、好きなものが好きな時間に見ることができる。

 もっと言えば、アマゾンのように放送配信が本業ではないネット通販の事業者が、追加のサービスで配信ビジネスを手がけるようになった。数年前では考えられないようなライバルが現れた。ここ数年の変化は今までにない激しさだ。

 これまでのやり方では、お客様に選ばれなくなってしまうだろう。我々が変化しないといけない」

サッカー、外部に販売し好調

 ――どう戦っていくのか。

 「WOWOWは、月額視聴料2300円(税込み2530円)の単一商品しかなかったが、これからは映像商品を多様化していく。今年踏み出したのが、映像商品を外部の媒体で販売することだ。

 我々が独占中継する欧州のサッカー大会を、ABEMA(アベマ)で視聴できるようにした。WOWOWに加入するのに慎重な若い世代にも気軽に見てもらおうというのが狙いだ。10~30歳代のサッカーファンに好評で、手応えを感じている。

 昔はこういうことをすると、テレビの加入者が逃げていくのではないかという恐怖心があった。やってみたら、新たな顧客層の獲得につながった。ターゲット層に合わせて、いろいろな商品を積極的に開発していきたい」

 ――求められるコンテンツの中身は変化しているのか。

 「変化していないと思う。音楽、スポーツ、演劇、映画、海外ドラマ。お客様がお金を払ってでも見てみたいと思うことは根本的には変わっていない。昔は野球が強かったといった人気の変化はあるが、スポーツを見たいというのは変わらない。

 何が変わったかといえば、届ける手段。求められる中身でも、スポーツならば、生が見たい。最初から最後まで見たい。演劇も見たいが、チケットが買えない。でも、何とかして見たい。これらが、テクノロジーの変化で楽しみ方が変わってくる。

 サッカーの視聴料は円安もあって、値上がりが激しい。日本のビジネスモデル上、これ以上高くなったら、手を出さなくなるのではないか。地上波でゴルフの国際大会やサッカーW杯の予選を流さなくなった。どれでも買えるというのは難しいのではないか」

 ――日本のコンテンツ力は落ちていないか。

 「韓国と比較しているのではないか。韓国はマーケットが小さいので、国を挙げてグローバルに売りだそうとハリウッドを徹底的に研究し、補助金も出している。日本はある程度の人口があるので、国内で十分ビジネスがやれてきた。海外を狙って作っていない。だから、海外からは魅力的じゃなかったりする。

 圧倒的に世界で通用するのはどうしてもアニメ。日本はキー局も映画会社もアニメがメインになっている。日本のコンテンツクリエイティブの力が落ちているというよりも、ビジネスモデルの転換が遅れたのではないか。外資は桁違いの予算を使ってグローバルに回収することを考えている」

放送配信ビジネス以外も

 ――収益を複層化させている。

 「一本足だった放送配信ビジネス以外も本格的にやっていきたい。たとえば、海外アーティストの国内放映権を押さえて、コンサートを開いたり、グッズを販売したりして、収益化の展開を増やしていく。

 中継する海外のテニスやゴルフ大会を実際に観戦するツアーもオリジナルでつくる。もともと事業局があって、イベントをやってきたが、圧倒的に放送の売り上げと利益が高く、おまけのようなサービスだったものを、同じぐらいの考え方でいこうと。社内で重要性に対する意識を変えたい。

 イベントや興行は、失敗して赤字になる可能性もある。今まではリスクの小さい範囲でやってきたが、これからはリスクを取って、投資も増やし、事業を大きくしていく。エンターテインメント分野で実績のある米ウォルト・ディズニーの日本法人幹部を専務で迎え入れたのもそのためだ。

 長年かけてアーティストやクリエイターたちとの信頼関係を築いてきたのは、我々の大きな強みだ。ファンとエンタメをつなぐ役割をWOWOWができるのではないかと思っている」

 ――M&A(企業の合併・買収)の可能性は。

 「具体的には言えないが、重要な戦略だ。会社を買うよりも、人材を手に入れるということは検討しないといけない。人を育てるには何年もかかる。時間を買う概念でM&Aやアライアンスはやらなければならない」

◆山本均氏(やまもと・ひとし) 1987年東工大工卒、西武百貨店(現そごう・西武)入社。90年10月に開局前のWOWOWに転職し、編成局長などを経て2024年4月から社長。テレビでスポーツ観戦するのが好きで、休日は朝から米大リーグやゴルフ、大相撲などの中継にかじりついている。埼玉県出身。

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