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2度目の最年長「金」狙う53歳杉浦佳子…「下り坂」「衰え」感じた3年間、友が支える

読売新聞 / 2024年8月30日 5時0分

杉浦選手(右)は厳しい練習の合間に伊藤さんを誘っては、相談に乗ってもらった(昨年7月撮影)=伊藤さん提供

 日本の最年長金メダリストが、パラリンピックの舞台に戻ってきた。29日の自転車女子3000メートル個人追い抜きに出場した杉浦佳子選手(53)。前回東京大会からの3年間、体が不調の時も競技をやめずにいられたのは、励まし続けてくれた友人がいたからだ。(塚本康平)

 「選手としてはもう、下り坂じゃないか」。パリ大会を目指していた昨年4月、ワールドカップ・イタリア大会で転倒し、頭を打った。帰国後、坂を少し上っただけで息が上がり、練習の疲労が取れにくくなった。「パリは無理かも」。何度も弱気が頭をもたげた。

 そんな時、LINEをする相手は決まっていた。健常者で全日本選手権に出場経験もある伊藤圭菜子さん(52)だ。「時間、空いてない?」と誘い、数十キロ離れたカフェまで一緒に自転車をこいだ。

10年前に意気投合

 伊藤さんとは2014年、富士山で行われた自転車レースで出会った。3位に入り、優勝した伊藤さんとともに表彰台に上がると意気投合。まもなく伊藤さんの実業団チームのジャージーが届いた。「チームメートになりたい」。熱烈な勧誘を受け、本格的に自転車競技を始めた。

 しかし2年後、静岡県伊豆市で行われたレースで落車事故に遭ってしまう。頭蓋骨骨折で意識不明の重体となり、奇跡的に目を覚ましたが、記憶は所々抜け落ち、一時は文字も読めなくなった。医師の診断は、高次脳機能障害。右半身にまひが残った。

 伊藤さんは競技に誘った責任を感じて謝った。でも杉浦選手は「誘ってくれたから今がある。圭菜ちゃんのおかげだよ」と首を横に振った。

 懸命なリハビリの末、トレーニングを再開し、パラ自転車に転向。持ち前のスタミナで台頭し、東京大会ではロードのタイムトライアルとレースの両方で、日本人最年長となる金メダルを獲得した。「最年少記録は二度と作れないけど、最年長記録はまた作れる」。笑顔で語ったその言葉は、記録とともに多くの人の記憶に刻まれた。

「10年前よりも速い」

 東京大会後、体力は衰え、まひのない左脚も痛み出した。愚痴を言いたくて、伊藤さんに練習メニューを見せると、「きつかったでしょ。よくやるね」と嫌がらずに付き合ってくれた。「知り合った頃よりも速くなっていて、同年代の星だよ」と言ってくれる友人の期待に応えたくて、「まだやめられない」と奮起。練習内容や生活習慣を一から見直し、つかんだパリ切符だった。

 今大会の日本勢初メダルがかかった最初のレースは予選5位に終わった。しかし、ロードレースなどの得意種目がまだ控えている。レース後、杉浦選手は「色んな人の手を借りてやってきた結果がこれで残念」と涙を浮かべたが、「気持ちを切り替えて次に臨む」と前を見据えた。

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