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100%売場主導!徹底した現場への権限移譲で急成長...ロピアがめざす、働きがいある職場とは【インタビュー】

J-CASTニュース / 2024年8月29日 12時0分

100%売場主導!徹底した現場への権限移譲で急成長...ロピアがめざす、働きがいある職場とは【インタビュー】

浜野仁志さん、前川孝雄(左から)。ロピアを基幹事業とするOIC グループの会社ロゴ前にて

株式会社ロピアは、「100%売場主導」の事業部制を採用し、徹底的な現場への権限移譲を行い、社員の主体性重視の経営を進めている。その結果、3割が赤字(2023年11月、帝国データバンク)ともいわれる食品スーパー業界で、破竹の勢いで成長を遂げている。

人材育成支援を手掛ける、株式会社FeelWorks代表の前川孝雄さんが、ロピアの丸の内オフィスを訪問し、株式会社OICグループ経営戦略本部 本部長 兼 人事総務本部 本部長の浜野仁志さんに対談形式でインタビューを実施。同社の組織運営の背景にある経営理念、人を育て活かす考え方と仕組み、その成果と課題、今後の展望などについて、深く話を聞いた。

《お話し》浜野 仁志さん(株式会社OICグループ 経営戦略本部 本部長 兼 人事総務本部 本部長)《聴き手》前川 孝雄(株式会社FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師)

「つまらない」仕事を、夢中で取り組めるゲームに変える

前川孝雄 御社は、社名「ロピア」の由来である「ロープライスのユートピア(理想郷)」をめざすとともに、「100%売場主導」を方針とする事業部制導入による徹底した現場への権限移譲と、社員の自主性重視の経営を進めています。その結果、経営環境が厳しい食品スーパー業界のなかで異例の急成長を遂げています。
御社では「個店主義」の考え方のもと、各部門の現場チーフに売り場を任せて、地域やお客様のニーズを的確に掴み、その要望にあった商品、売り場配置、品揃え、店頭ポップや商品価格まで、現場の裁量に任せているとのことです。
まずは、この現場重視や顧客志向の経営の源にある企業理念や事業方針はどういったもので、どのような経緯で導入されたのか、おうかがいできますか。

浜野仁志さん 弊社トップが、新入社員や内定者への例え話として、「仕事ってつまらないですよね」と、逆説から語りかけることがあります。毎日定時まで決まりきった仕事をするのは、終業時刻が待ち遠しいばかりで、少しも面白くありません。でもゲームなら、時間が経つのも忘れて夢中になり、気がつけば朝になっているぐらいに楽しいですよね。
自分がこうしようと思って行動し、結果がどんどん変わっていくような仕事なら、ゲームのように楽しいはず。この考え方が、チーフ主導の経営(以下、チーフ経営)の根底にあります。
ゲームが楽しいのはなぜでしょうか。それは、すべてを自分で考え、決めて行い、結果がフィードバックされるからです。
そこで弊社では、各現場のチーフが自分で商品の仕入れを決め、価格を決め、売り方まで決められるようにしています。さらに、メンバーであるパート従業員の採用も現場に任せています。自分で決めた商品・価格・売り方で生まれた売上から、自分で作ったチームの人件費等を引くことで、営業利益が残ります。自分の行動が、業績としてはっきり見えるのです。
このように「仕事をゲームのように楽しんでほしい」という思いから、現場で働く方への権限委譲を行っています。

前川 とても明瞭で、わかりやすいですね。社員の主体性や自律性にこだわる理由がわかりました。御社では、いつ頃からそのような現場主義の発想が生まれ、仕組みを取り入れてきたのでしょうか。

頑張った人が報われる仕組みが不可欠

浜野 チーフ経営が明確な経営方針となったのは、スーパーマーケット事業の屋号をロピアとした2011年頃です。ただ、チーフ経営の考え方そのものは1970年代、弊社の祖業である精肉店の創業から脈々と続いてきたものです。
創業者である会長は、創業以前に働いていた店で一生懸命働き、これまでにない業績を上げたそうです。しかし給料などで報いてもらえず、むしろ生意気だと解雇を言い渡されてしまったとか。その時の理不尽さを反面教師に、自分が経営する会社では、頑張った人に報いる仕組みづくりを始めたようです。
たとえば会長は創業当時、毎月手刷りで社内報を発行していました。社内報は全店舗の業績を掲載し、目標を達成できた店に丸印を付けるなど、社内で各店舗の活躍ぶりを情報共有するものでした。
成果に対して報いるためには、部門ごとの経営数値がすべて見えることが必須。精肉店だった当初は社内報の内容も店別単位でしたが、スーパーマーケット事業へと拡大する中で加工品などの食品、更には青果、鮮魚、惣菜に至るまで、店別部門別の結果をフィードバックするようになっていきました。

前川 御社の現場主義は、創業経営者の強い信念から生まれたのですね。しかし、店舗数も大幅に増え、組織が大きくなるなかで、現場への権限移譲を組織の中に浸透させ続けていくことは大変ではないですか。

浜野さん たしかに大変な部分はあります。チーフたちがそれぞれ思い思いの方向に進んでしまうと、組織はばらばらになってしまうでしょう。私たちは店舗運営について大きな裁量を持ちつつ、大きな方向性について共感しあう集団でなければなりません。
そこで大きな役割を果たしているのが、理念とビジョンの力です。弊社は理念重視の会社としては、国内屈指だと自負しています。
たとえば、ロピアの理念の一節には「同じ商品ならより安く。同じ価格ならより良いものを。楽しく感動できる、愛に満ちた愛されるお店です」というものがあります。
「ナショナルブランドの商品は、競合店より安く売る」「同じ価格なら、競合店より品質の勝る商品を提供する」というのはスーパーマーケットの戦術の一つではありますが、これだけならば単なる安売り屋になってしまいます。
だからこそ、3文目に私たちの大切にする価値観、取引先やお客様に食を通じて感動を与え、相思相愛の関係になりたいという思いを入れ込んでいます。商売によって世の中に貢献するという点で、近江商人の「三方よし」の考え方にも通じますね。
安さの訴求はそれ自体が目的ではなく、お客様に楽しさや感動を得ていただくための一つの手段にすぎません。チーフ経営とは、お客様を喜ばせたい、という思いに共感してもらうところから始まるのです。

正しく実践可能な理念だからこそ浸透し、人が集まる

前川 御社の掲げる「食のテーマパーク」という言葉に込められた意味ですね。

浜野さん はい。弊社では、この思いに共感している従業員が活躍していると感じています。
最近、当社のブランドストーリー作成のために外部会社へ依頼し、社外のインタビュアーの方に経営幹部や女性リーダー、生え抜き社員からキャリア採用者までさまざまな層の思いを聴いてもらったのですが、その際のインタビュアーが「誰もが同じように理念への共感を語ってくれる」と感動されていました。ただ、それでは記事が作りにくいとこぼされていましたが(笑)。

前川 それだけ共通の理念やビジョンが、組織に浸透しているということですね。
私は20年近く、人が活きる企業を訪問しその秘訣を探求し続けていますが、共通しているのは、確固たる理念やビジョンがしっかりあり、それがお題目ではなく、きちんと現場に浸透している組織ほど強いし伸びるということです。
御社も正にそうですが、それほどまでに理念やビジョンを徹底できるのは、なぜだと考えますか。

浜野さん それは、理念やビジョンが明快で、かつチーフ経営とも整合しているからだと思います。
私たちの原点にある「お客様に喜びや感動を与え、愛される存在になろう」という思いは、当たり前のことかもしれませんが、素朴だからこそ分かりやすく、誰もが共感できるものではないでしょうか。
また、理念で「同じ商品ならより安く...」と掲げたところで、実態は本社が決めた商品や価格、売り方を実践するだけでは実感も湧きませんよね。チーフ経営の仕組みがあるからこそ、日々の仕事で自分自身の力で理念を体現し、それが成果に繋がっていく環境づくりができています。
だからこそ理念やビジョンが単なるお題目にならず、強い共感を持って受け入れられていると感じています。

前川 なるほど。素晴らしいですね。理念やビジョンがまっとうで腹落ちでき、社員自らが実践して実感できる。だから理念経営に拍車がかかっていくのですね。

浜野さん 日本において、小売業は決して社会的ステータスが高い業種とはいえません。しかし近年、弊社は名だたる企業から優秀な人材にも来ていただいています。その要因は、どんな思いで何を目指すのかという理念が明らかで、それに共感した仲間たちと共に理念の実現を目指すという姿勢にあると実感しています。
企業が成長拡大していくなかでは、理念を重視し続けていくのは極めて重要だと考えています。理念という柱がないまま、業績拡大に伴って業種・業態をやみくもに多角化させてしまい、失敗する企業も多いですから。
だからこそ弊社の理念は、食という世界のあらゆる人にとって必要不可欠な領域で、感動や喜びを提供するという方針に絞り込んでいます。さらに、誰にとっても分かりやすい表現で、現場で実践できる仕組みを整えることで、仕事を通じて日々理念を磨くことができるのです。

現場主義を徹底した事業部制のチーフ経営とは

前川 現場主義を実現するための、具体的な組織についてうかがいます。本部機能と各店舗、店舗内でのリーダーと各売り場の関係など、どのように組織を構成して運用されていますか。

浜野さん 事業部制とチーフ経営の基本的な仕組みについてご説明します。
まず地域・エリア毎に営業本部が設置され、ひとつの営業本部内には精肉、青果、鮮魚、惣菜、その他一般食品等の事業部が存在します。
そして、チーフはこれらの事業部のいずれかに所属しています。現在約100店あるロピアの各店舗に、平均6人の事業部別のチーフがおりますので、全国で約600人のチーフがいる計算です。

前川 なるほど。

浜野さん たとえば、私が関東にある店舗で精肉事業部チーフを担当していれば、私の上司は関東エリアの精肉事業部長です。同じ店舗でも、隣に売り場のある鮮魚事業部チーフなら、上司は関東エリアの鮮魚事業部長です。店長は各事業部のチーフと同格で、一般的なスーパーマーケットとは異なり、チーフの上司ではありません。
商店街に精肉店や鮮魚店などの専門店が入っていて、チーフはそれぞれが個人事業主として売り場を経営しているイメージです。店長はいわば商店街の事務局長ですね。チーフたちの意見を聞きながら、レジ部門、施設管理、店舗の人事・総務を担当し、店舗全体の運営管理を行う立場です。

前川 店長がいるとはいえ、店において組織はピラミッド構造になっておらず、チーフたちはそれぞれ商いをしている同列の立場。各チーフの裁量と役割は明確で、上下関係ではないのですね。

浜野さん そうですね。弊社ではロピアに限らず、グループ全体で会社・部署ごとの責任分担を明確にしています。
たとえば、グループ内には商品の製造や開発、卸を担う会社が多数ありますが、ロピアのチーフはグループ会社でもあくまで一取引先として交渉し、売れ筋でないと思えば仕入れなくてもかまいません。
一方でグループ会社の側も、ロピア以外の企業に販売することが可能です。ロピアが小売業として日々研鑽する傍らで、グループ会社も店舗のニーズを聴き取り、売ってもらえる商品を作ろうと努力するのです。
このように、チーフ経営は理念と整合した仕組みとして、グループ全体で機能していると言えます。だからこそ他の企業が一部を切り取って真似しがたい、弊社ならではの特徴となっているのではないでしょうか。

前川 なるほど。店長がトップで、各売り場従業員がその下にいる一般的な組織ではなく、各売り場チーフが独立した事業主感覚で経営をしている。それが「個店主義」「売り場主義」であり、御社の理念を体現する中核的な仕組みなのですね。

明日公開の<現場主義の要となるチーフの育成に注力...ロピアが貫く、理念とビジョンへの共感重視経営【インタビュー】>に続きます。

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