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「パラ選手もアスリート」注目度の違い、悔しさ胸に戦い続けた鈴木孝幸選手が「最高の金メダル」

読売新聞 / 2024年8月30日 15時5分

金メダルを手にする男子50メートル平泳ぎの鈴木孝幸選手(29日、パリ郊外で)=須藤菜々子撮影

 パラリンピック6大会連続出場のレジェンドが29日、日本勢に今大会初の金メダルをもたらした。競泳男子50メートル平泳ぎの鈴木孝幸選手(37)。2004年アテネ大会以来、20年の長きにわたって第一線で戦い続ける根底には、「パラ選手はアスリートと見られていない」という悔しさがあった。

 生まれつき両腕と両脚に障害があるが鍛え上げられた肉体は鋼のようだ。高校の頃まで車いすを使わず、学校には特注のスケートボードに乗って通い、階段をよじのぼって教室に向かった。当時水泳を指導した伊藤裕子さん(62)は「何でも一人でこなしたし、健常者と同じ生活が 強靱 きょうじんな肉体の基礎を作った」と話す。

 だから、高校3年で初めてパラリンピックに出場した頃、周りの選手から「障害者という理由で大学の水泳部に入れなかった」「スポーツ施設を使わせてもらえなかった」と聞くと憤りを覚えた。障害者の大会ではスタンドの観客はまばら。「厳しい練習をしているのはパラ選手も同じなのに」と健常選手との待遇や注目度の違いに悔しさを募らせた。

 12年ロンドン大会の後、パラ水泳が盛んな英国のノーザンブリア大学に留学した。パラリンピックに出場したと言えば、記念撮影を求められ、大学は将来有望な高校生の障害者選手の獲得に意欲的だった。障害者と健常者がともに参加する「インクルーシブ大会」が各地で催され、障害者選手をアスリートと認める雰囲気が心地よかった。

日本人初のIPCアスリート委員に

 パラアスリートの競技環境を改善しようと、21年東京大会の期間中、国際パラリンピック委員会の「アスリート委員」に立候補し、日本人で初めて選任された。大会運営などについて選手目線で積極的に意見を述べ、今大会では、シャンゼリゼ通りの石畳を舞台とする開会式について、「車いすや義足の選手が歩きづらいことを考慮してほしい」と注文をつけた。今年11月には自身の名前を冠したインクルーシブ大会「鈴木孝幸杯」も企画している。

 この日の決勝は、北京大会以来16年ぶりの自己新記録をマークした。「自己ベストも出せて、金メダルもついてきて最高の金メダル」。会場を満員に埋めた大観衆を見上げ、感無量の様子で語った。(波多江一郎)

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