カンヌ映画祭「ある視点」部門ノミネート、奥山大史監督「ぼくのお日さま」…「吃音」少年の心情テーマの歌から発想
読売新聞 / 2024年9月1日 10時44分
「ぼくのお日さま」を題名と主題歌に使いたいという思いを「ハンバート ハンバート」の2人に手紙で伝えた。「快諾してくれた上、作詞・作曲の佐藤さんの申し出で、全ての劇中音楽を作ってもらえた。作品にとって、すごく幸せなことでした」
今年、カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門にノミネートされた「ぼくのお日さま」が9月6~8日、テアトル新宿と日比谷・TOHOシネマズシャンテで先行公開され、同13日から全国公開される。田舎町のスケートリンクを舞台にした淡い恋の物語。初長編に続き撮影・脚本・編集を担った28歳の奥山大史監督に、着想から影響を受けた同名楽曲との出会いなどについて聞いた。(松田拓也)
幼い頃、選手を目指していた姉の影響で7年ほどフィギュアスケートを習った経験が出発点となった。「男の子がまだ少なかったからかコーチも周囲の人もみんな優しかった。だから、楽しくもダラダラと続けた不思議な時間でもありました」と振り返る。
少年の友情を描き、サンセバスチャン国際映画祭の新人監督賞に輝いた初長編「僕はイエス様が嫌い」と同様、幼少期の経験に基づく映画を作ろうと考える中、思いついた題材。3~4年間は良いストーリーが浮かばなかったが、偶然、佐藤良成と佐野遊穂の夫婦デュオ「ハンバート ハンバート」が吃音がある少年の心情を歌った「ぼくのお日さま」に出会い、「色々な発想が生まれ、物語が一気に広がった」。
2009年生まれの越山と11年生まれの中西はオーディションで見いだした。2人はスケートの経験者だったが、未経験だった池松には自身が教わった先生の手ほどきで半年間、練習してもらった。「越山くんと中西さんは補い合い、池松さんは2人を支え続けてくれた。絶妙なバランスの3人に決まり、本当によかった」とほほえむ。
スケート場に入り込む光をいかした、温かみさえ感じさせる映像が目を引く。撮影はデジタルカメラだが、フィルムのような質感も魅力的だ。「ドキュメンタリーのように実際の場面の10~20倍の時間をかけて撮ってもいる。デジタルでもフィルムっぽく撮れる時代に生まれた世代だからこそ使える手法をいかせているのかな、と思います」
米津玄師「地球儀」などのミュージックビデオやCMを手がけ、次世代を担う映像作家の一人。広告会社の社員でもあり、今作も会社の仕事としてメガホンを取った。「会社員として映画を作り続けられるのはすごくありがたい。広告業界には映画監督と同じくらい、尊敬する人がたくさんいるので、今後もどんどん得られるものは得ていきたい」
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