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NHK尖閣発言 電波の「私物化」をなぜ許した

読売新聞 / 2024年9月1日 5時0分

 事実に反する、個人の一方的な見解が公共放送で国内外に発信される事態が起きた。「電波ジャック」とも言える深刻な問題で、十分な検証と再発防止策が不可欠だ。

 NHKのラジオ国際放送などで、外部スタッフの男性が靖国神社での落書き事件のニュースを伝えた際、原稿にない不規則発言を20秒ほど続ける事態が起きた。

 男性は中国籍で、中国語で「尖閣諸島は中国の領土」「NHKの歴史修正主義宣伝とプロフェッショナルではない業務に抗議します」と発言した。さらに英語でも「南京大虐殺を忘れるな。慰安婦を忘れるな」などと述べた。

 国際放送は、日本の政府見解や文化を外国や在外邦人に伝えるのが役割だ。放送法でNHKの本来業務と定められ、国から交付金も出ている。男性の発言は、放送の趣旨に反し、極めて不適切だ。

 放送は世界各地で聴くことができる。私的で誤った主張が拡散すれば、誤解や偏見を生み、国益を損なう。NHKは、問題の根深さを重く受け止めるべきだ。

 放送には、中国語がわかるNHK職員のデスクと、外部のディレクターが立ち会っていたが、生放送だったため、発言を制止できなかったという。

 20秒もの間、発言を止められなかった点は見過ごせない。生放送であるなら、不測の事態を想定しておくべきではなかったか。

 NHKは放送当日、ラジオ国際放送などで謝罪し、後日改めて特別番組を放送して、「尖閣諸島は日本固有の領土」などの政府見解を伝えた。稲葉延雄会長も国会で経緯を説明し、陳謝した。

 男性は、NHKの関連団体と契約し、2002年からニュース原稿の中国語への翻訳と、読み上げ業務にあたってきた。

 この男性とみられる人物が過去に、香港の中国系メディアに出演していたことも判明した。NHKは「取材情報の流出などはない」と説明しているが、中国系メディアで働いていた事実を把握できていなかったという。

 NHKの関連団体は、男性との契約を解除した。NHKは男性に損害賠償を請求する方針だ。過去の仕事についても問題がないか、改めて精査する必要がある。

 再発防止策としては、ラジオ国際放送のニュースの大半を事前収録に切り替えたという。発言の適否を判断するだけでなく、ニュースの正確性や表現の妥当性を担保する意味でも、複数の目でチェックする体制が重要だ。

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