1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

入社5年の若手を新規開拓エリアの事業部長に抜擢! ロピアがめざす100人の若手社長育成戦略とは【インタビュー】

J-CASTニュース / 2024年8月31日 12時0分

入社5年の若手を新規開拓エリアの事業部長に抜擢! ロピアがめざす100人の若手社長育成戦略とは【インタビュー】

浜野仁志さん、前川孝雄(左から)。ロピアを基幹事業とするOIC グループの会社ロゴ前にて

株式会社ロピアは、「100%売場主導」の事業部制を採用し、徹底的な現場への権限移譲を行い、社員の主体性重視の経営を進めている。その結果、3割が赤字(2023年11月、帝国データバンク)ともいわれる食品スーパー業界で、破竹の勢いで成長を遂げている。

人材育成支援を手掛ける、株式会社FeelWorks代表の前川孝雄さんが、ロピアの丸の内オフィスを訪問し、株式会社OICグループ経営戦略本部 本部長 兼 人事総務本部 本部長の浜野仁志さんに対談形式でインタビューを実施。同社の組織運営の背景にある経営理念、人を育て活かす考え方と仕組み、その成果と課題、今後の展望などについて、深く話を聞いた。

《お話し》浜野 仁志さん(株式会社OICグループ 経営戦略本部 本部長 兼 人事総務本部 本部長)《聴き手》前川 孝雄(株式会社FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師)

現場チーフの任用基準や資格の設定が今後の課題

<現場主義の要となるチーフの育成に注力...ロピアが貫く、理念とビジョンへの共感重視経営【インタビュー】>の続きです。

前川 社員の配置や異動などは、どのような方針で行っていますか。キャリア形成支援の視点など、どのようにお考えでしょうか。

浜野さん 社員の配置については各エリアの本部長、事業部長に人事権があり、私たち本社人事からは一切口を出しません。それぞれがスペシャリストの集まりなので、メンバーと距離の近い本部長や部長の方が、彼らの適性をよく分かっています。
ただ、新規出店などでエリアをまたいだ人事が必要な場合は、それぞれのエリア本部長同士が話し合うなどして全社的に決めていくこともあります。

前川 事業部をまたいだチーフ間の横異動はあるのですか。

浜野さん 今のところ、ほとんどありません。事業部体制とスペシャリストの育成が現在の基本形なので。このトレードオフとして、ゼネラリストが育ちにくい環境を生んでいます。
このことは課題として現在検討もしており、一般社員やチーフの間に事業部をまたいだ経験を積んでから、チーフや事業部長になる方がよいのではないかという案も出てきています。一方、事業部長以上になると、将来の本部長等育成のため、すでに他事業部への異動や関連会社の幹部への出向などを実施しています。

前川 スペシャリストとしての社員育成が中心とのことですが、人材育成の現状や課題について教えてください。

浜野さん 現場でいかに商品を捌くかなど現場の日常的なスキルは、どうしてもOJTが中心なので現場に任せています。ただ、事業部ごとの特性に沿いながらも体系的なスキル向上が必要な部分については、各事業部の教育担当と本部が連携して、どのような研修が適切かを一緒に議論して作っています。そのほか、特定事業部に限らない一般的なマネジメント・スキルについては本部が対応する、という役割分担も行っています。

前川 課題はあるのでしょうか。

浜野さん 今後の課題として、一定の基準をクリアする仕組み作りがあります。そのために、チーフになる基準の明確化や、資格試験の導入などを検討している最中です。
弊社におけるチーフはその売り場の経営者ですので、たとえば精肉事業部であればお肉の切り方が上手いだけでチーフになれる、という基準では困ります。どうすればチーフになれるかはチーフ候補である若手からの関心も高いので、何がその人をチーフたらしめるか、納得いく形で明確にすることが必要です。
最終的に誰をチーフに任命するかは各事業部の判断ですが、チーフを任せられる人材を増やすことで、現場が適切に任命できるためのサポートをしていきたいです。

前川 なるほど。現場主義の中核を担うチーフ人材をしっかり育成しプールしていくためにも、また、チーフをめざす次世代の目標設定にとっても、大切なバックアップの仕組みづくりですね。

入社4年目から研修は命令ではなく、社員がメニューから自ら選ぶ

浜野さん 新卒から3年目程度までは、全員が必修の研修を受ける形でよいですが、今後は4年目以降の研修は全て任意にしたいと考えています。
会社側でメニューはつくるけれど、何をどう選ぶかは本人に自由に選択してもらう。スキル向上やチーフになるまでの必要な研修は用意するけれど、学ぶか否かは本人が決める。本部や上司から言われたからと、誰かにやらされて研修を受ける必要はない。やる気のある人が、自己責任で選び学んでいけるようにしていきたいのです。
全員に無理に学ばせる必要はないと考えています。やる気にさせることに労力を割くより、やる気と熱意のある人に100%コミットし、サポートしたいと思っています。

前川 自律性や主体性ある人材の育成に向けて、理に適っていますね。現在の私は人材育成支援のFeelWorksを営んでいますが、昭和から平成に変わる時代に新卒でリクルートに入社しました。
入社から若手社員のころは、リクルート事件のさなかで、バブル崩壊もあって会社が潰れるほどの負債を抱えていました。社員の各種手当や福利厚生はほとんどなくなりましたが、一方で当時の経営陣が新設したのがコーポレート・ユニバーシティでした。
学ぶメニューを整え、やる気のある者に自律的に学ぶ機会を与えることが、組織の危機と再生に欠かせないと考えたのでしょう。
そもそも「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」が社訓のような企業風土でしたから、プロフィット・センター制を導入して独立採算の現場組織を作り出して、20代の若手マネジャーに各チームの経営を任せてきたことも、人が育つ源泉だったと思います。私が経営者になる素地を作ってくれたリクルートには感謝しかありません。現場社員に権限移譲を徹底する、OICグループさんと相通ずる部分が多いと思いながらお聴きしていました。
また、長年人材育成のプロとして多数の企業を支援し、先進企業も見てきて確信になりつつあるのは、人を活かす経営とは、最後は権限移譲、任せることに行きつくということです。
日本企業のルーツを遡れば、前川製作所の「独法経営」や京セラの「アメーバ経営」も同じで、人を育て活かすために、各現場を独立採算制とし、責任と権限をセットで任せてきたわけです。

浜野さん それが大事ですね。反対に、現場に責任だけを押し付ける企業も少なくないですから。

前川 最近は「管理職は罰ゲーム」と言われる切ない風潮がありますが、これは、現場管理職に対して責任は求めるものの裁量が少ないことが原因です。
だから、若者は昇進をコスパが悪いと避けるようになっているのです。私はOICグループさんのように現場管理職に裁量と責任をセットで権限移譲をする企業が増え、活き活き働く上司を日本中に増やしたい。そんな上司たちが若者たちの憧れの存在となり、キャリアの希望を膨らませていく。そんな社会を創りたいと考えています。

チャレンジが当たり前の現場で若手社員が急成長

前川 ところで、ずっとお話をお聴きするなかで、浜野さんのお話のなかに「サポート」という言葉が多いのが印象的です。現場をサポートするという意識が強いのでしょうか。

浜野さん 弊社は現場の強さが武器なので、現場主義はなくしたくありません。だから現場が主役となり、しっかり動けるための環境を整えるのが、本部の仕事だと考えています。
一方で、私の入社当初から比較しても大規模なグループ組織や店舗数に成長してきたため、ある程度、組織全体に横ぐしを刺して統制する必要性を感じることもあります。その場合でも、どの部分でどのように行うのが適切か、常に考えています。
たとえば、ある島の交差点で自動車事故が多発して困っている。だからといって、「全員がすぐに止まれるように時速10キロで走りなさい」と命じるのは適切ではないでしょう。たしかに事故は起こりにくくなるかもしれませんが、本来自動車という移動手段に期待していたスピードが失われてしまいます。しかし、信号機を置いて公正なルールを整備するというやり方なら、事故を防止しつつ、皆も走りやすくなる。このように、本部としてやろうとしていることが、現場として動きやすくなるものなのかどうかは、常に考えています。

前川 いかにして、主役の現場をサポートするかが浜野さんの仕事ということですね。では、諸々のサポートや仕組みに支えられた現場主義によって、人材育成や活躍支援の成果はどのように上がっているのでしょうか。手応えや好事例などがあれば教えてください。

浜野さん 1つには、若手がとても速くめざましく成長した例があります。現在、大卒入社5年目の事業部長がいます。彼は入社2年でチーフになり、その後3年で事業部長となりました。年収は1,000万円以上です。
会社としても初参入のエリアの事業部長への抜擢で、これから新規開拓をしながら出店数を増やしていくチャレンジングな仕事で、とても重要なミッションを担っていますが、彼であればできると期待しています。
こうした人材が育ったのは、弊社の現場に、若手が本人の努力で成果を上げながら大きく成長できる環境があったためだと思います。
また、弊社にはチャレンジするのが当たり前、しなければダメだという文化があり、健全なプレッシャーが働いています。
新規出店があると、エース級の人材がチーフに任命され、事業部長と一緒に何かこれまでにない新たなチャレンジをしようと頑張る。その結果、成果が上がった取り組みは既存店にもフィードバックされ、実践することになる。
ですから、新規出店の都度、会社全体が進化している感じがします。これも現場主義による成果の一つではないかと思います。

前川 御社のサイトには「2030年までに若手社員の中から新しく100人の社長が誕生する可能性」が掲げられていますが、社長を担う資質を備えたチーフのみならず、それを取りまとめる事業部長まで輩出し始めているというのは、驚異的な育成力ですね。

明日公開の<正しい仕事を思い切りできる会社に! ロピアの「人を活かす経営」未来像【インタビュー】>に続きます。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください