防衛費概算要求 予算増は信頼回復が前提だ
読売新聞 / 2024年9月2日 5時0分
安全保障環境の悪化を踏まえ、計画通りに防衛予算を積み増していくことに異論はないが、最近の防衛省・自衛隊の不祥事は目に余る。
厳しい財政事情の下での増額は、国民の信頼の上に成り立つことを自覚すべきだ。
防衛省が、2025年度予算の概算要求で過去最大となる8兆5389億円を計上した。防衛力を強化するため、政府は23~27年度の5年間の防衛費を総額43兆円とする計画を決めている。防衛費が8兆円超となれば初めてだ。
国際秩序が揺らぐ中、北大西洋条約機構(NATO)に加盟する国々は、国防費を国内総生産(GDP)比で2%超に増やす目標を掲げている。日本も、同程度の水準まで防衛関連予算を増額するのはやむを得ない。
概算要求の特徴は、かねて不足しているミサイルや弾薬の調達を本格的に開始することだ。
具体的には、艦艇用と潜水艦用の長射程の誘導弾の取得費を計上し、計200億円を要求した。
政府は昨年度からイージス艦に搭載する米国製巡航ミサイル「トマホーク」を購入している。
北朝鮮は弾道ミサイルの発射を繰り返し、中国も日本を射程に入れた多くのミサイルを保有している。脅威に対する抑止効果を高めるため、敵のミサイル発射拠点を攻撃する「反撃能力」の運用体制を築くのは当然だ。
日本は、ミサイルの探知・追尾にイージス艦やレーダーを活用している。概算要求では、多数の小型衛星で情報を収集する「衛星コンステレーション」の構築費を計上し、探知能力の向上を図る。
また、慢性的な自衛官の人手不足に対応するため、少人数で運用できる新型護衛艦の建造や、処遇の改善も進める。最新鋭の装備を導入しても、それを扱う人材が足りなければ話にならない。自衛隊にとって人材の確保は急務だ。
一方、防衛省・自衛隊では不祥事が後を絶たない。海自の隊員が川崎重工業から飲食代や金品の提供を受けていた疑惑が浮上した。艦艇の乗組員が、資格がないのに機密情報に触れていた事案や、潜水手当の不正受給も判明した。
手当の不正受給を巡っては、元隊員の逮捕が木原防衛相に報告されていなかった。文民統制という根幹が揺らぎかねない事態だ。
制服組だけでなく、防衛相を支える背広組まで、報告を怠った原因は何なのか。木原氏はこの問題を徹底的に調査し、再発防止策を講じるべきだ。
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