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[深層一直線]リーダー選び 「お面」は不要…右松健太

読売新聞 / 2024年9月3日 10時0分

安川純撮影

永田町にも夏祭りの熱気 

 「この暑さはいつまでつづくんだろうね――」。今年、何度も家族や友人と交わした言葉だ。9月に入っても、長い夏は続いている。「短い夏」「長い冬」といった季節の情感は、今は昔。連日、35度を超える猛暑日が続く日本の夏の暑さは、ひと昔前と比べると異常にも感じる。それでも、夏には昔から変わらぬ楽しみというものもある。

 家の近くの寺では毎年、夏祭りが開催される。夕暮れ時の境内には、ちょうちんをぶら下げた屋台が軒を連ね、細い参道の両側から、焼きそばやとうもろこしの香ばしいにおいがただよい、冷たい生ビールがすすむ。ごったがえす人の波に乗りながら、なじみの顔を見つけると二言三言、言葉を交わす。コロナ禍で一時中止を余儀なくされた夏祭りだが、変わらぬ夏の風景が帰ってきた。

 お面を売る出店にさしかかると、白熱電球の柔らかい明かりに照らされた数々のお面が、祭りの路地をひときわ彩っていた。ひょっとこやおかめといった定番のお面もあれば、はやりのアニメキャラクターや戦隊ヒーローのお面など、顔かたちも様々だ。ずらりと並んだお面を眺めていると、その隣で、頭にお面をのせた少年の笑顔がはじけていた。

 境内の広場には大きなやぐらが組まれ、盆踊りをする人の輪が幾重にもできていた。軽やかに舞う浴衣姿のベテランの踊り手のうしろで、見よう見まねで踊る若者や外国人の姿もある。遠くの空に日が沈みかけた宵の口――。「東京音頭」や「炭坑節」に、威勢のいい和太鼓の音が合わさり、我が町の祭りの夜は熱気に包まれていた。

 熱気に包まれるといえば、いま、永田町も同じかもしれない。次のリーダー選びが白熱している。自民党の総裁選は、8月末現在で正式に立候補を表明した候補者、立候補を検討する候補者をあわせると10人以上にのぼる異例の混戦模様だ。立憲民主党の代表選をめぐっては、立候補予定者の事前説明会に7陣営が出席した。両党とも、20人の推薦人を確保する難しさもあって、告示日に何人の候補者が出馬できるかは現時点では不透明だが、多くの議員が名乗りを上げる状況は頼もしくも感じる。

 政治とカネの問題で失った政治への信頼をどう取り戻すのか、豊かさを実感できない暮らしや将来への不安、緊迫の度を増す安全保障環境など、論戦を交わすテーマは枚挙にいとまがない。今月、両党のリーダー候補が語るこの国の未来像や、問題解決の具体策に耳を傾けたい。

 自民党総裁選の直後、新たな首相に期待感が高まっているうちに衆議院を解散し、総選挙に踏み切る「早期解散論」も広がっているが、選挙は祭りではない。くれぐれも、見栄えの良い「お面」をかぶった“選挙の顔”ではなく、素顔で語るリーダーを選んでもらいたい。

 「この“熱さ”はいつまでつづくんだろう――」。政治が熱気を帯びたならば、長く熱い論戦を期待したい。そして、政治の「長い冬」の到来はもう許してはならない。

(BS日テレ「深層NEWS」キャスター)

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