「越境のネット通販、国内取引に匹敵する規模」「メルカリでしか買えない商品で魅力高めていく」…メルカリ・山本真人執行役

　フリーマーケットアプリ大手のメルカリは、日本人の利用者向けに、海外で出品される商品が購入できるサービスを年内にも始める。韓国のフリマアプリを手始めに、将来は米国や中国などにも広げる考えだ。日本事業責任者の山本真人執行役に狙いを聞いた。（聞き手・上地洋実）

　――越境のインターネット通販事業を拡大させる。

　「２０２４年度の売り上げで、越境ＥＣ（ネット通販）は、非常に高い伸びを示しており、日本国内の取引に匹敵する規模になった。リユース（再使用）でも、インバウンドの需要が大きくなっている。為替の影響もあり、バイイングパワーが強くなっている。

　国内の出品では、エンターテインメントやホビー、推し活に該当する商品が４割と、大きな割合を占めている。海外の方からもニーズは大きく、越境ＥＣは今後も伸びることが見込まれる。今は代理業のパートナーと一緒に展開しているが、この割合を増やしていきたい。

　今でも、日本のコンテンツの人気は、台湾や韓国など、アジア圏で多くある。各地域でのメルカリの認知度はまだ低い。各地で日本の商品がメルカリで買えるということを知ってもらいたい」

　――日本の利用者が購入できる海外の商品を増やすという。

　「日本の商品を海外に売るというだけではなく、逆の流れも当然チャンスがあると思っていて、展開を考えている。何でも売れるというよりは、魅力度の高いコンテンツが売れる。たとえば、日本でなかなか手に入れるのが難しいが、海外では安く買える商品がそうだ。

　中でも注目しているのが、こちらもエンタメ、ホビー、推し活。Ｋポップのような韓国の文化に関する商品は、日本のフリマアプリにも多く出品されており、購入したいという人が多くいる。アパレルやコスメも含めて、狙っていけると思う。

　提携した雷市場は、韓国でメルカリに近い中古取引のプラットフォームで、以前からコミュニケーションを取ってきた。日本の商品を雷市場でも買えるようにするのと同時に、韓国のコンテンツをメルカリで売るチャンスはないかと探ってきた。現在は、どういった商品がどれくらい売れるかといった点を調べており、年内の本格運用を目指している」

　――事業を本格化させる狙いは。

　「メルカリの強みは、出品されているモノにある。新品を扱うＥＣサイトとの一番の違いは、メルカリにしかないアイテムが買えること。新品だったら高いけれど、中古品だから安く買えるといったユニーク性だけではない。販売が終了している昔のアイテムが買える。自分で作ったハンドメイド、あまり売っていないモノも売られている。ほかではなく、メルカリで見つけられる宝探しのような魅力がある。

　海外の商品を日本に取り込む際にも、どこでも買える商品よりほかだと買えないが、メルカリだと買えるという商品群を補強したい。海外のブランド品は日本でも買えるはずだ。韓国でしかないオリジナル品を扱えるようになれば、メルカリでしか買えないとなり、魅力を高められる。

　すでに、約１２０の国と地域で、日本の商品を売ることができる状態を作った。その中で、より多く買われている地域が見えてくる。中古品の売買も抵抗なく使っていただける国が見えてくる。たとえば、香港は大きく伸びている。そういうデータを見ながら、逆にその地域の商品を売ってもらえるニーズもあるのではないかと考えた」

　――ほかの国や地域での展開は。

　「まずは韓国。将来的には、米国や中国、台湾でも検討したい。１品ごとに送るのではなく、一定期間にいくつか買ってもらって発送するのが一般的かと思う。そういう点からすれば、地理的な意味での親和性がある場所になってくるはずだ。

　日本で出品している人にとっては、売れることが大事。出品しても売れなければやめてしまう。逆のことも同じように言えると思う。

　Ｋポップにとっては、一大市場が日本だったりする。Ｋポップの日本オリジナルアイテムが非常にいっぱいあって、韓国で逆に買われていたりする例もある。メーカーの意図とは違う形で、われわれ自身が目指しているモノの流動性を世界でなめらかにしていく。そんな位置づけを担っていく取り組みになるのではないか。期待している」

◆山本真人氏（やまもと・まさと）　２００４年東大大学院修了。ＮＴＴドコモやグーグル、アップルの日本法人などを経て、１８年にメルカリで決済事業を手がけるメルペイに参画。金融新規事業や加盟店の開拓といったビジネス全般を担当した。メルペイ代表取締役ＣＥＯ（最高経営責任者）を経て、２４年１月からメルカリ執行役。