「ライフプランナーの女性を倍増」「働く６０歳代のニーズに応える提案を」…ソニー生命保険・高橋薫社長

インタビューに応じるソニー生命保険の高橋社長（東京都千代田区で）

　ソニー生命保険は、損害保険や銀行といったソニーフィナンシャルグループ傘下の企業と連携を強化する。退職金を活用した資産形成商品の販売にも力を入れ、サービスの多様化を図る。高橋薫社長に戦略を聞いた。（聞き手・橋爪新拓）

金利の上昇局面、営業手法変わる

　――会社の課題や成長の余地をどうとらえているか。

　「中期経営計画を策定するにあたって二つのことを考えた。一つは、わが社は生命保険の保有契約を増やしているということ。市場全体では成熟してマーケットが縮小して営業職員も減っているのに、わが社は増えている。他社は非生保や海外事業にも力を入れているが、わが社では優先順位が低い。

　もう一つは金利。これまでは、低金利で収益確保を目指してきたが、今後は金利の上昇局面で収益を上げていかないといけない。営業手法が変わってくる。

　なぜ、成長を続けられたのか。我々のモデルは、お客様の思いを聞き、一緒に考えて提案するということを創業以来やってきた。生命保険の市場は成熟しており、出来合いのものを売ろうとしても売れない。こうしたことが血となり、肉となってきた。ソニーフィナンシャルグループは２０２５年の株式上場を目指しており、さらに力を入れていきたい」

　――ライフプランナーと呼ばれる職員が強みだ。

　「会社がこういう商品を売りたいから売るというのではなく、お客様一人一人の思いを聞いて提案している。ライフプランナーは現在、５５００人おり、女性が２５０人だ。多様性は必要で、まだまだリーチできていないところがあるのではないか。まずは３年間で女性を５００人。倍にしたい。つきあいがなかった顧客層を見据えて、職員を増やしていく。働き方も経営管理のあり方も変わってくるだろう。

　ソニー生命はどちらかといえば、ファミリー層が強く、個人のお客様を中心に伸びてきた。前の中期経営計画では、法人顧客の獲得に力を入れ、深掘りができ、手応えも感じている。事業承継をとっても、Ｍ＆Ａ（企業の合併・買収）先を紹介するといったことができる。

　日本は６５歳以上の人口が増え続けているが、わが社はあまり手を打ってこなかった。たとえば、死亡保障も定年退職する６０歳が一つの区切りだった。最近は働く６０歳代が増えている。保障期間を長くするような提案をする。退職金も同じで、資産形成のニーズに応えられる」

グループ連携、足し算をかけ算に

　――グループのシナジーについて。

　「銀行や損害保険のデータベースを活用することが期待できる。解約した保険金の受け取りや保険料の振り込みは銀行で行う。そこから先はまだなので、連鎖を起こしたい。グループのデータを活用し、お客様に価値を提供する。こういったお客様には、こんな提案ができるという点でデータの活用はあり得る。

　ライフプランナーが損保の自動車保険を紹介するとか、銀行の住宅ローンを案内するとか、それなりの成果は出ているが、まだ足し算の状況で、かけ算にしなければならない。グループでこんな商品を扱っているというのではなく、価値を感じてもらえるような方法を検討している」

　――金利がある世界が到来した。

　「資産形成商品には大きなニーズがある。低金利で制約があるのと違い、自由度が高まる。円建ての投資商品を提供する企業も増えてくる。うちも検討を進めている。資産が変動するリスクもあり、管理体制が問われる。売れるからいいのではなく、リスクにどう対応するかが大事になる」

　――保険業界では、代理店や出向者の問題が出ている。

　「どうしてこんなことが起きるのか。単にコンプライアンスの問題ではない。代理店の力や規模が大きく、寄り添いすぎるとゆがみが出てくるのではないか。どうしても規模が大きい代理店と取引をしたい、シェア（占有率）を増やしたいと思うはずだ。

　否定する気持ちはないが、行き過ぎると、顧客不在になって、代理店中心になる。お客様の思いを聞いて、オーダーメイドで商品をつくるという志がないと、問題が起きてしまう。そのことに尽くして多くの契約をいただく。単純な商品売りはしないことだ。

　おかしなことは多々ある。もう一度襟を正して、お客様の側から見たらどういうことなのかを徹底的に詰める。金融庁が言っているのはそういうことなのではないか」

◆高橋薫氏（たかはし・かおる）　１９７９年早大理工卒、安田火災海上保険（現・損害保険ジャパン）入社。損害保険ジャパン日本興亜副社長や損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険社長を経て、２０２０年ソニーフィナンシャルホールディングス（現・ソニーフィナンシャルグループ）社外取締役に。２３年からソニー生命保険社長。