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杜氏の経験や勘をデジタル支援、日本酒の発酵度を可視化するツール「もろみエール」利用拡大

読売新聞 / 2024年9月3日 20時56分

 日本酒の発酵度を自動計算し、グラフで可視化するツール「もろみエール」を名古屋国税局が開発し、各地の酒蔵で利用が広がっている。経験則や感覚が物を言う酒造りの現場をデジタルの力で支援し、品質の保持や日本酒文化の維持につなげる狙いだ。(福益博子)

 江戸時代末期から続く愛知県愛西市の「水谷酒造」。同社の後藤実和さん(26)がパソコンで開いた表計算シートに、日本酒のもととなる「もろみ」のアルコール度数や加えた水の量などを入力すると、発酵の進み具合がグラフでぱっと示された。

 日本酒は、米や こうじ、水からなるもろみを発酵させ、それを搾って造る。発酵の進み方は加える水の量や温度などによって変化し、搾りのタイミングが日本酒の出来を左右する。

 各酒蔵は加水量などのデータを日々記録しているが、ツールに入力すれば発酵度が自動計算され、グラフで示される。搾りの最適なタイミングが可視化され、勘や経験だけに頼らず酒を造ることができるという。全国新酒鑑評会で金賞に輝いた日本酒の発酵度も表示され、比較して参考にすることも可能だ。

 水谷酒造は今年5月、火事で全焼し、紙で保管していた酒造りの記録の大半を失った。今期は別の酒蔵に間借りして酒造りを再開する予定で、残った記録をツールに入力して備えている。後藤さんは「これまで造ってきた酒の再現が目指しやすくなる」と期待を寄せる。

 ツールは昨年1月に本格公開された。同国税局によると、少なくとも東海地方の40の酒蔵に提供され、東北地方などで導入に興味を示す酒蔵があるという。

 愛知県豊橋市の「福井酒造」では、ツールの使用で作業時間が短縮した。ベテラン 杜氏 とうじ 王砿生 おうこうせいさん(67)は「経験に基づいた自分の勘を、ツールが示す発酵度という指標が支えてくれ、搾りの決断がしやすくなった」と歓迎する。

 国税庁の統計では、国内の酒蔵の数は30年間で6割ほどになり、清酒(日本酒)の消費量も3割に激減。ビールや発泡酒などの安価な酒が人気を集めていることや、杜氏の高齢化、後継者不足などが原因とみられる。

 同国税局は、酒の製造工程をもろみエールで管理することで、一定の品質を保持でき、業務の効率化や人員不足への対応につながると期待している。

 同国税局の田島健一郎・鑑定官室長は「杜氏の経験や勘も大切だが、ツールを活用し、安定して良い酒を造ることができれば、日本酒人気の復活につながる」と話す。

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