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ロシアの戦争犯罪「徹底捜査」、ICC主任検察官「証拠収集にAIやSNSが効果発揮」

読売新聞 / 2024年9月4日 7時23分

2日、ハーグのICC本部でインタビューに応じるカリム・カーン主任検察官=酒井圭吾撮影

 【ハーグ=酒井圭吾】読売新聞の単独インタビューに応じた国際刑事裁判所(ICC)のカリム・カーン主任検察官は、ロシアやパレスチナ自治区ガザでの戦闘に関する戦争犯罪捜査について「我々の責任は、主要な犯罪容疑が徹底的に調査されるまで(捜査の)資源を使うことだ」と述べた。対外圧力に屈せず、今後も新たな逮捕状を請求する姿勢を示したものだ。

 ICCは2022年2月のウクライナ侵略開始直後からロシアに対する捜査を始めた。23年3月には、ウクライナの子供をロシアに強制移動させたことが戦争犯罪にあたるとして、プーチン露大統領らに逮捕状を出している。

 一連の捜査を巡り、カーン氏はICCの証拠収集能力を強化してきたと強調した。従来の聞き取り調査に加え、人工知能(AI)やSNS、携帯電話から入手できるデータの収集・分析が効果を発揮していると説明し、「証拠の質と厳格さを高める努力をしてきた。公判を維持できる証拠を増やすという変化が出ている」と述べた。ICCが首都キーウに設立した現地事務所も「非常に多くの点で有用性を示している」と評価した。今年7月にキーウの小児病院が受けた爆撃では「捜査員は24時間以内に現場に入った」と明かし、立件に向けて捜査していることを示唆した。

 ガザで戦闘を続けるイスラエルのネタニヤフ首相らの逮捕状請求を巡っては「(逮捕状の発行や将来の有罪を)判断するのは裁判官だが、真実を明らかにするのは証拠だ」と捜査に自信をみせた。イスラエルが主張する自衛権には「触れるつもりはない」と明言し、「我々はガザで(イスラエルの)継続的な占領があったことを既に明らかにしている」と指摘した。

 ロシアやイスラエルの政府幹部を侵略犯罪で訴追するようICCに求める声も多いが、現状では侵略犯罪は加盟国間の紛争にしか管轄権が及ばないのが原則だ。カーン氏は「(ICCに加盟していないロシアの)犯罪は成立しているが、管轄権の要件をクリアする必要がある。決めるのは国家だ」と述べ、加盟国に規定改革の議論を求めた。

 ICCの捜査や訴追で最大の障壁となっているのが、容疑者の身柄拘束だ。ICC加盟国のモンゴルはプーチン氏を拘束する義務を履行していない。プーチン氏は10月に加盟国メキシコを訪問するとの報道も出ている。ロシアとウクライナの間で中立的な立場を示す新興・途上国「グローバル・サウス」を中心に、義務をないがしろにする国が続く恐れがある。

 カーン氏は「全ての加盟国には(ICCの設立条約『ローマ規定』に)合意した責任がある。モンゴルやメキシコも加盟国だ」と協力を強く求めた。戦争犯罪には「時効がない。法律は忍耐強いものだ」と強調し、身柄拘束を求め続ける考えを示した。

Karim KHAN 英国北部エディンバラ出身。国際刑事法や国際人権法を専門とする弁護士。旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所やルワンダ国際刑事裁判所などで勤務し、イスラム過激派組織「イスラム国」の犯罪を裁く国連の捜査チームも率いた。2021年にICCの主任検察官に選出され、任期は30年まで。

インタビューの要旨

 【ウクライナ侵略捜査】

▽捜査は継続中でさらなる逮捕状請求を示唆。

▽侵略開始以降、質の高い証拠収集能力を強化した。現地事務所や人工知能(AI)、SNSも活用し、公判を維持できるように多数の証拠を収集してきた。

▽ウクライナは近くICC加盟国になる。

▽侵略犯罪での立件には、管轄権の要件を改革する加盟国の決定が必要だ。

 【パレスチナ紛争捜査】

▽イスラエルはパレスチナを継続的に占領してきた。

▽イスラエルが認めないICCの管轄権は、2021年にICC裁判部が認める決定を出している。

 【プーチン氏のモンゴル訪問】

▽身柄拘束義務の執行を期待する。ロシアに便宜を図るより、原則に立つ勇気を持つ方が国のため、世界のためになる。

▽逮捕状の効力に時効はない。身柄拘束の努力を継続する。

 【米下院の制裁法案可決】

▽裁判所への攻撃は許されない。ルールに基づいたシステムが成り立たなくなる。

▽ロシアやイスラエル(の支持者)から脅迫を受けている職員もいる。

▽日本はICCの加盟国の中で最大の資金拠出国で、米国との友好関係もある。外交的協力や働きかけを期待している。

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