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原発事故に備えた新型核燃料開発へ、来春にも技術試験…収容管改良で水素爆発を低減

読売新聞 / 2024年9月4日 15時0分

 原子力発電所の重大事故に備え、政府は来年4月にも、新型の核燃料「事故耐性燃料(ATF)」の開発に向けた技術試験を本格化させる。ウランを収める 被覆管 ひふくかんを改良し、水素爆発の発生を抑える効果を見込む。米国の試験炉で放射線の照射試験を進め、2030年代の実用化を目指す。

 ATFは11年の東京電力福島第一原発事故を契機に各国の研究開発が始まった。この事故では、地震と津波による電源喪失で、原子炉が冷却されなくなった。高温によって、ジルコニウム合金製の被覆管が水蒸気と反応し、大量の水素が発生。1、3、4号機で水素爆発が引き起こされた。

 ATFではこの事故の教訓を踏まえ、被覆管をクロムでコーティングしたり、金属材料ではないセラミックスに変更したりする製法が検討されている。現行の核燃料より耐熱性が高まることで、核燃料が溶け落ちる炉心溶融(メルトダウン)などの進行を数十分~数時間ほど遅らせ、核燃料を冷やす準備時間が稼げる。高温時に水素の発生も抑えられ、水素爆発の危険性が大幅に低減するという。

 国内では、資源エネルギー庁が24年度までの10年間で計39億円の予算を設け、日本原子力研究開発機構(JAEA)に研究開発を委託。三菱重工業と東芝エネルギーシステムズ、日立GEニュークリア・エナジーの3社と共同で開発に取り組んでいる。

 JAEAは来年4月にも、米国との原子力の研究協力に関する枠組みを活用し、米エネルギー省アイダホ国立研究所(アイダホ州)の試験炉で、ステンレス鋼のATFの技術試験に着手する。高温・高圧下で放射線を照射し続け、材料の劣化具合を確かめる。

 昨春以降、クロムでコーティングしたジルコニウム合金とセラミックスを用いたATFの照射試験も始まっており、三つの材料で安全性やコスト面などが比較検討される。まずは実用化しやすい材料を選択し、残り二つも実験を継続する。

 国内唯一の材料試験炉だった「JMTR」(茨城県)は廃炉作業中で、国内でのATFの研究開発には限界がある。海外では、米国で商用炉を用いた照射試験が先行して始まっているほか、中国やロシア、フランスなども開発に乗り出している。日本政府は米国の試験炉を積極活用して開発を加速させ、35年以降をめどに国内の原発に導入したい考えだ。

 開発チームの山下真一郎・JAEA研究主幹は「ATFの開発によって原発の安全性や信頼度を高め、脱炭素電源として原発の活用を後押ししたい」と話す。

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