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日本伝統の「板倉構法」で半壊認定の住宅再建へ、「ひみ里山杉」と壊れた母屋の部材で…林業振興も視野

読売新聞 / 2024年9月12日 14時52分

解体される荒井さんの住宅(8月9日、氷見市で)

 能登半島地震で半壊の認定を受けた富山県氷見市の住宅で、日本伝統の板倉構法を用いた再建が進んでいる。県内の建築設計事務所が同市産の「ひみ里山杉」と壊れた母屋の部材を使いながら作業しており、市内で住宅の再建が進む中、「地域の力を生かした復興につながる」と注目されている。(野内凪輔)

 住宅の持ち主は自伐型林業推進協会(東京都)の事務局の荒井美穂子さん(56)。能登半島の豊かな自然にひかれ、4年前に同市阿尾にある築約60年の木造2階建て住宅を購入した。時折森を通って窓から吹き込む涼風が心地よく、落ち着いた雰囲気の家を気に入り、千葉との2拠点生活を続けていた。

 だが、元日に能登半島地震が発生した。荒井さんは県外にいたためけがはなかったが、氷見の住宅は大きな被害を受けた。2日後に現地を訪れて目にしたのは、障子が激しく引き裂かれ、柱が傾いた家の様子だった。

 「なんとか建て直したい」と思う中、思い出したのが、かつて東日本大震災で復興支援に携わっていた際、宮城県南三陸町で目にした板倉構法の復興住宅だった。木の壁に包まれる温かみや安心感が印象に残っていた。急な復興でその地域らしい建築が消えていく中、地域の力を生かした再建ができないかと考えた。

 そんな中、荒井さんが再建を相談したのが建築事務所「里山建築研究所」(茨城県)の主宰を務める安藤邦広・筑波大学名誉教授だった。荒井さんとは、東北での仕事を通じてつながりがあった。

 安藤名誉教授は3月、実際に氷見市を訪問。その際、直径30~40センチ、長さ5・4メートルの赤松のはりに目がとまった。「これだけ太くて大きな松は、今はもう珍しい。かつて立山周辺の山に生え、厳しい降雪に耐えたのだろう」と話し、新しい家のはりとして再利用することにした。他にも、張り替えればまだ使えそうな障子や、破損していない瓦も多くみつかり、これらを使うことにした。

 さらに安藤名誉教授の呼びかけで、富山市の建築設計事務所「ミヅホ建設」と、氷見市の製材会社「岸田木材」も協力。建材には市産の「ひみ里山杉」を用い、地域の木材と県内企業の力で再建を目指すプロジェクトが始動した。岸田木材の岸田毅代表は「今のやり方で進めると家の思い出が残るだけではなく、地域産業の復興にもつながる。被災した家を再建する人にとって、選択肢の一つになってほしい」と話す。

 住宅は9月中に着工し、来年2月には建て直しが完了する見通し。荒井さんは「かつての家の材料を使いながら再建できることはうれしい。地元の林業の振興につながる再建方法があることを多くの人に知ってもらいたい」と語った。

◆板倉構法=溝を彫った柱の間に厚いスギ板をはめて、壁をつくる建築法。神社建築で用いられることが多い。耐火性に優れ、木材が湿気を吸収するので室内の湿度が一定に保たれる。

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