ポスター掲示板 選挙を愚弄する活動許すな
読売新聞 / 2024年9月5日 5時0分
民主主義を支える選挙を
7月の東京都知事選で選挙と無関係なポスターが大量に掲示板に貼られた問題で、与野党の実務者が公職選挙法の改正に向けた協議を開始した。
政治団体「NHKから国民を守る党」は、掲示板にポスターを貼る権利を売り出した。その結果、風俗店の広告や、子どもが描いた絵などのポスターが氾濫した。
掲示板は、立候補者を有権者に知ってもらうためのもので、公費で賄われている。それを金もうけに利用するなどもっての外だ。
与野党協議では、自民、公明両党が、営利目的での掲示板の使用を禁じ、違反した場合は罰金を科す案を提示した。共産党を除く野党は
選挙を商売に利用するかのような手法を禁止するのは当然だが、それで十分とは言えまい。候補者が無償でポスターの権利を譲ったと主張した場合は、選挙と無関係のポスターでも認めるのか。
都知事選ではまた、候補者が、知人の女性のほぼ全裸のポスターを貼り出したケースもあった。
与党は、品位を損なう内容のポスターを禁じる規定を新設する方針だ。罰則は設けないという。
強制力のない条項で、公序良俗に反するようなポスターの掲示を防げるのだろうか。
現行の公選法は、ポスターの内容を何ら制限していない。憲法が定めた「表現の自由」や、選挙の自由を重んじているためだ。
一方で憲法は、表現の自由などの権利はあくまでも「公共の福祉のために」行使できる、とも定めている。それを踏まえれば、品位を保つため、憲法に抵触しない範囲で、一定の強制力のある規制を設けることは可能だろう。
近年は政見放送で候補者が服を脱ぎ始めたり、
与党は、政見放送には品位保持規定があるため、新たな規制は設けないという。だが、この規定が
一部の政党は、政見放送の内容への介入は、表現の自由を侵すことになるとして規制に慎重だ。
しかし、選挙運動を正常な姿に改めることがなぜ、表現の自由の侵害になるのか。表現の自由を主張するだけで、現状を野放しにすることこそ、自由で民主的な選挙の根幹を揺るがしかねない。
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