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露大統領を招待 逮捕の義務放棄は容認できぬ

読売新聞 / 2024年9月5日 5時0分

 ロシアのプーチン大統領には戦争犯罪の疑いで逮捕状が出されている。その人物を自国に招き、拘束義務を履行しないことは、法治に反する行為にほかならない。

 プーチン氏がモンゴルを訪問し、フレルスフ大統領と会談した。経済分野を中心に、関係強化をうたった共同文書を発表した。

 国際刑事裁判所(ICC)は昨年、プーチン氏が、侵略したウクライナの子どもらをロシアに連れ去ったとして逮捕状を発行した。プーチン氏は拘束を恐れ、これまで訪問先を中国や北朝鮮などICC非加盟国に限定してきた。

 プーチン氏は、今回のモンゴル訪問を突破口に、メキシコなど他の加盟国を訪れる可能性がある。逮捕状が執行されない状況をあえて作り、ICCの権威を失墜させる狙いではないか。国際法を一顧だにしない姿勢は目に余る。

 ICCの加盟国で逮捕協力への義務がありながら、プーチン氏を受け入れたモンゴルにも重大な責任がある。ICCには裁判官が18人おり、モンゴルは1人を出している。本来は主体的にICCの決定を履行すべき立場にある。

 モンゴルは石油製品の9割をロシアからの輸入に依存し、不足電力はロシアから購入している。こうした経済的な事情があるとはいえ、ロシアの無法ぶりを容認していては、国際社会の信頼を失うことになると自覚すべきだ。

 ICCは戦争犯罪や集団殺害などを犯した個人を訴追、処罰する国際機関だが、独自の法執行機関を持たない。今回のプーチン氏のモンゴル訪問は、加盟する124か国・地域に対応を委ねるしかない実情を浮き彫りにした。

 加盟国がプーチン氏逮捕の義務を果たさない状況が今後も続けば、ICCの存在意義が問われることとなる。法の支配に基づく国際秩序が揺らぎかねない。

 ICCは、加盟国が協力義務を履行しなかったと判断すれば、締約国会議や国連安全保障理事会に問題を付託することができる。モンゴルにも適用すべきだ。

 強制力はないとしても、こうした手続きを通じ、国際世論を喚起しなければならない。

 日本はICCの最大の資金拠出国であり、現在は赤根智子氏が所長を務めている。ICCへの支援を通じ、ロシアの非道を国際世論に訴え続ける必要がある。

 同時に、ICCに協力しないモンゴルなどに対しては、2国間の経済支援の見直しを含め、法の支配を守る姿勢を示すべきだ。

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