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甲子園目指した球児が視力に異変…「第二の人生」でゴールボール転向、あす未明に決勝

読売新聞 / 2024年9月5日 5時7分

ゴールボール男子準決勝 後半、シュートを放つ鳥居陽生(4日、パリで)=木佐貫冬星撮影

 パリパラリンピックのゴールボール男子日本代表は4日、準決勝で強豪・中国と対戦し、13―5で大勝した。この試合に途中出場した鳥居 陽生 (はるき)(20)(国立障害者リハビリテーションセンター)は、野球に打ち込んでいた高1の秋に難病「レーベル病」を発症。一度は絶望を味わったが、「第二の人生」と位置づけるゴールボールで初の金メダルに挑む。(デジタル編集部 池田亮)

 中国との一戦は、序盤から宮食行次のバウンドボールが立て続けに決まり、日本が前半を8―2と大量リードして折り返した。後半も金子和也の5得点で粘る中国を突き放した。鳥居は後半残り3分53秒から出場した。果敢にゴールを狙ったが得点は奪えず、逆に終了間際に、脇の下をボールがすり抜けて失点。個人的には悔しい結果となった。

 試合後、目を赤く ()らして取材に応じた鳥居は「失点してしまい、今までやってきた練習を振り返ったら本当に悔しくて……」とあふれる涙が止まらなかった。それでも、決勝進出について「金メダルを狙って練習してきたので、本当にうれしい」と笑顔で涙をぬぐった。

難病で視野の中心部分が見えない

 鳥居が視力に異変を感じたのは、甲子園を目指して進学した地元・神奈川の相洋高校で野球の練習をしている時だった。

 キャッチボールをしているとボールが見えにくくなり、チームメートの顔もぼやけるようになった。ある日の練習中、目に砂が入ってしまった。いくら目を洗っても、砂が取れないと感じた。眼科に行ったものの原因は分からず。大学病院の検査で、視神経の病気で難病の「レーベル病」と診断された。視野の中心部分が欠けて見えなくなっていた。

 病院からの帰り道。気丈な母・千香子さんが、車を運転しながら涙を流していた。「何て言ったらいいのだろう……」。幼い頃から大好きだった野球もできなくなる。絶望感しかなかった。

 視野の中心が見えないため、ものを見ようとすると余計に見えない。字がうまく書けなくなり、食事の時もはしでつかみにくくなった。相手の顔が見えにくくなり、人と話すことも苦手になった。

 リハビリをするなかで出会ったのがゴールボールだった。体験会に参加したところ、衝撃を受けた。アイシェードをつけたら真っ暗闇。音だけを頼りに、飛んでくるボールに飛びつく。最初は自分がどこにいるのか、どこを向いて立っているのかも分からなかった。味わったことのない感覚のスポーツに「怖さよりも、面白さが勝っていた」とのめり込んだ。

ニッポンコールに喜び

 野球部には退部を申し出たが「鳥居が頑張っている姿に勇気づけられるから、3年間一緒に頑張ろう」。監督はそう言ってチームに置いてくれた。球拾いやグラウンド整備を手伝いながら、トレーニング室にこもって、鳴らした携帯電話を目隠しをした状態で探すなど、ゴールボールのためになりそうな練習を続けた。

 高3の時に「第二の人生を歩んでいる」と作文につづった。病によって一度はどん底を味わったが、多くの人に支えられて「どのような困難があろうと前を向いて頑張ることができた」。そんな感謝の気持ちを胸に、パリの大舞台に臨んだ。

 初めてのパラリンピックでは、会場の「ニッポン」コールも新鮮だった。「今まで経験したことがないし、国を背負って戦っていると気持ちが高まった」と目を輝かせた。

 ウクライナとの決勝に向け、「コートを縦横無尽に動き回り、限界を超える気持ちで挑みたい」と、力強く語った。金メダルを懸けた一戦は、日本時間6日午前2時半から行われる。

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