川崎市の高炉跡地「脱炭素やリサイクルなどの事業で、国の政策に合わせた社会貢献ができる」…JFEホールディングス・北野嘉久社長
読売新聞 / 2024年9月10日 12時30分
川崎製鉄と日本鋼管が経営統合してJFEホールディングスが発足し、すでに20年以上がたつ。鉄鋼を中心に、プラント建設や商社を傘下に置く。川崎市の高炉跡地では、立地を生かして脱炭素の事業にも取り組む方針だ。北野嘉久社長に話を聞いた。(聞き手・田中俊資)
4本目の収益の柱に
――持ち株会社のトップとして、グループ連携でどういった相乗効果を狙うか。
「2023年に川崎市の製鉄所で高炉を休止するなど、今までは合理化策を中心とした守りの経営だった。生きるか死ぬかの状態で、構造改革が最大のミッションだった。その時代は終わり、改革後の成長を果たすのが、ホールディングス社長としての役割だと思う。
グループは三つの事業会社がそれぞれ異なった強みを持っている。シナジーを発揮できる事業を創り出すことが大事だ。最近、取り組んだ代表的な事例が洋上風力発電事業だと思う。JFEスチールが極厚の鋼材を生産し、JFEエンジニアリングが風車や発電設備を支える土台を建設する。JFE商事は、使用する部材の供給網を整えた。こうしたグループ内連携の旗振り役を持ち株会社が担っていきたい」
――川崎市の高炉跡地を活用し、新たな収益源にするという。
「三つの選択肢がある。土地の賃料収入を得ることと売却、そして、脱炭素やリサイクルなどの事業利用だ。水素を活用した二酸化炭素(CO2)の排出量を抑えたグリーン電力やその電気を使ったデータセンターの整備など、220ヘクタールある広大な土地を使って、国の政策に合わせた社会貢献ができると考えている。鉄鋼、エンジニアリング、商社に続く4本目の収益の柱にしたい」
――岡山県倉敷市にある製鉄所で大型電炉の導入を検討している。
「巨額の投資が必要なので、政府の補助制度に採択されれば、費用対効果が見込める。補助がなかったらできない。27年度の稼働開始に向けて、24年度中には意思決定したい。大型電炉で高級鋼材を造るための研究開発を地道に進めている。原料のスクラップや直接還元鉄の調達もめどはつきつつある」
成長見込める地域を絞る
――海外事業拡大に向けた戦略は。
「歴史を振り返れば、中国やASEAN(東南アジア諸国連合)に力を入れてきた。基本戦略として、現地の信頼できるパートナーと組んで、当社の強みである技術力を生かして海外事業を展開している。今後は成長が見込める国や地域を絞っていきたい。インドやインドネシア、北米、豪州。鉄鋼需要は多くないが、カーボンニュートラルに向けた魅力がある中東の諸国などを強化していく。
一方、日本では高付加価値商品に力を入れていく。国内でも、しっかりものづくりをしていく。
中国は様子見だ。世界の粗鋼生産の半分を消費し、経済成長が鈍化しているとはいえ、国内総生産(GDP)の規模は世界2位だ。競争も激しい。市場として、どうなるか、よく見極めていきたい」
――JFEスチールにGX(グリーントランスフォーメーション)とDX(デジタルトランスフォーメーション)の専門部署を作った。
「GXに関しては従来、いろいろなプロジェクトを作って活動してきたが、戦略本部という一義的な組織として活動する。電炉の建設する検討班もあるし、カーボンリサイクル高炉の研究開発をする部隊もある。政府や業界団体との連携もアンテナ高く進めていきたい。
DXも社内のほか、研究所、各製鉄所に部門があった。散らばっていたが一言して全社で取り組みたいと思っている。ロボットの推進やAI(人工知能)の開発など、一元管理する戦略本部という位置づけだ。
いずれも10年単位の戦略をしっかり立てて責任を持って遂行していきたい」
――円安が事業に与える影響は。
「原材料はほとんど輸入しており、マイナスの影響だが、製品の輸出はプラスに働くので、相殺できる。個社としてあまり影響がないというのが実態だ。しかし、これだけ急速に円安が進むと、エネルギー価格や物価が上昇して、国民生活が豊かにならない。1ドル=150~160円という水準は行き過ぎだ。急激な為替の変動も好ましくない」
◆北野嘉久氏(きたの・よしひさ) 1982年東工大院修了、川崎製鉄(現JFEホールディングス)入社。JFEスチール社長を経て、2024年4月から社長。製鉄所勤務が長く、川崎製鉄と日本鋼管の統合時は、生産技術の責任者として標準化を進めた。学生時代に打ち込んだ卓球を再開し、千葉県の製鉄所にある体育館で汗を流している。茨城県出身。
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