エムポックス 流行国への支援が欠かせない
読売新聞 / 2024年9月6日 5時0分
重症化しやすい新しい系統のエムポックス(サル痘)が、アフリカ中部で急拡大している。日本ではまだこのタイプは見つかっていないが、警戒を怠らないようにしたい。
エムポックスは、発疹や発熱、喉の痛み、リンパ節の腫れなどの症状が起きる感染症だ。
流行の中心であるコンゴ民主共和国では今年、すでに昨年1年間の感染者数を超える1万8000人以上の感染が報告され、このうち600人以上が死亡した。
世界保健機関(WHO)は先月、最高レベルの警告である「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。エムポックスに関して緊急事態を宣言するのは一昨年7月以来2度目だ。
前回の流行時には成人男性の感染が目立ち、主な感染経路は男性同士の性的接触とみられていた。感染者の多くは軽症だった。
これに対し、今回は家庭内感染によって子どもや女性にも広がり、重症の人もこれまでより多い。死者の8割は子どもだという。
日本では一昨年以降、約250人の感染が報告されているが、全て従来のタイプのウイルスだ。
一方、欧州やアジアでは、アフリカへの渡航歴がある人から、重症化しやすい新タイプの感染が確認されている。航空機が世界を飛び回り、国内外を人びとが活発に往来できるようになった今、日本にとってもひとごとではない。
政府はすでに、各都道府県で検査できる体制を整えたという。重症者向けの抗ウイルス薬については現在、承認審査中で、臨床研究の枠組みでならば使用できる。
検査や治療の体制を再点検し、国内で感染者が出た場合に備えなければならない。
世界での発生動向を注視し、必要に応じて、入国者に体調や渡航歴の申告を求めるなど、水際対策の強化も検討すべきだ。
エムポックスは、新型コロナウイルスのように、せきの
かねてアフリカの国々はワクチン不足が深刻で、感染症が
日本はコンゴ民主共和国に、エムポックスにも効果が確認されている天然痘の日本製ワクチンや接種針を供与する方針だ。世界的な流行を未然に防ぐためにも、こうした支援を重ねていきたい。
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