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徐々に視力失っている柔道・半谷静香が初メダル…「力の通り道」など「言語化」に徹し、技を「視覚化」

読売新聞 / 2024年9月6日 7時18分

柔道女子48キロ級で銀メダルを獲得した半谷静香(5日、パリで)=木佐貫冬星撮影

 パリパラリンピックの柔道は5日、女子48キロ級(全盲)が行われ、4大会連続出場の 半谷 (はんがい)静香(36)(トヨタループス)が銀メダルに輝いた。今もなお視力が次第に失われている半谷。恐怖と闘いながら、メダルを手にできたのは、視覚障害者ならではの、工夫があった。(デジタル編集部 池田亮)

 視覚障害者が出場する柔道は、選手が組み合った状態から試合が始まるのが特徴。ルールはオリンピックの柔道とほぼ同じだ。

 半谷は初戦の準々決勝も、世界ランク1位のエジェム・タシンチャブダル(トルコ)との準決勝もゴールデンスコア方式の延長で勝利。粘り強く戦い決勝に進んだ。決勝ではナタリア・ニコライチク(ウクライナ)に一本負けしたが、柔道の日本女子で初めてパラリンピックの決勝の舞台に立ち、銀メダルを獲得した。

難病が進行、家でも頭をぶつけるように

 半谷は生まれつきの網膜色素変性症で、子どもの頃はわずかに見えていた。だが症状が進行し、最近では横断歩道の白線が見えにくくなった。駅の改札ではカードをタッチする場所が分かりにくくなった。自宅で、物を拾おうとしてかがんだ時にテーブルの角に頭をぶつけたり、電子レンジの扉を閉め忘れていて顔から衝突したり……。「生活のなかでけがが増えてきたら、また見えなくなったんだなと思う」。今は光を感じられる程度。いつか、光すら感じられなくなるかもしれないと考えると、恐怖だ。

 見えない状態で臨んだ東京パラリンピックは5位に終わった。当時はまだ、全盲と弱視の選手が同じクラスで競技をしており、「見える選手」に負けたことに無力感もあった。その後、クラスの再編があり全盲と弱視は別のクラスに。半谷は全盲のクラスに振り分けられ、相手の対策がしやすくなった半面、「自分もちゃんと目が悪くなっているので、それは大変」と複雑な心境を語る。

大けが機に柔道を見つめなおす

 2022年5月に右膝の前十字靱帯を断裂して、1年間実戦から遠ざかった半谷。その間、見えない相手をどう感じるか、視覚障害者の柔道の基本について見つめ直した。その際にこだわったのが「言語化」だ。

 「これ」「あれ」などと指示をされたり、擬音語で説明されたりしても、全盲の半谷には理解することが難しい。練習では徹底的に言葉で説明することをコーチにも求めた。

 例えば、背負い投げであれば、相手と自分の力の向きがどう交わったら成功するのか。半谷は「相手との力の向きが合わさった時に投げたくなる瞬間がある」と話す。力と力がぶつかり合う柔道で、どのようにしたら「力の通り道」が見つかり、相手の力も利用して投げることができるのか、何も見えないなかで言葉を頼りに模索した。

 パラリンピックの舞台で、見えない相手と戦い、「力の向きを感じるのは難しい部分もあった」と半谷。それでも「最後まで諦めずに辛抱して、技をかけるタイミングも見えた。自分なりによくやれたと思う」と胸を張った。目の見えない半谷が、言語化を通じ、技のイメージを明確に描いた末に、輝くメダルを手にした。

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