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巨木に乗った着物姿の新婦が担がれる「日本一の奇祭」…過疎化進む集落の活性化に一役

読売新聞 / 2024年9月8日 15時2分

5年ぶりに開催された今年のほだれ祭(栃尾観光協会提供)

 新潟県長岡市栃尾地域の下来伝集落は、約20世帯が暮らす山あいの小さな集落だ。ここではまだ雪が残る3月、一風変わった奇祭が行われる。

 男性の局部をかたどった高さ2・2メートル、重さ600キロの巨大なケヤキの木「ほだれ様」に新婦が着物姿でまたがると、約50人の男衆が担いで会場内を往復する。ほだれ様を模した木彫りやタヌキ汁などの料理、土産物も並び、老若男女が一体となって盛り上げる。

 安産や五穀 豊穣 ほうじょうなどのご利益を願う「ほだれ祭」の始まりは約50年前。今年から実行委員長となった星野清さん(70)ら当時の青年団メンバーが、過疎化が進む集落の活性化を目指し、言い伝えに基づく祭りをつくろうと立ち上がった。

 言い伝えの内容はこうだ。ある日、未曽有の災害が集落を襲い、神木の「男杉」が倒れてしまった。対となる「女杉」が怒り狂い、人々は男杉の代わりにほだれ様を据え、怒りを静めた――。

 「せっかくなら、日本で一番大きいご神体を作ろう」。星野さんらは集落でひときわ大きいケヤキを伐採し、地元の大工らが集まってご神体を作製。女杉のそばには、ほだれ様をまつる「ほだれ大神」を設けた。

 集落の一角にはいまも、樹齢約850年の巨大な女杉がそびえ立つ。

他県と交流も

 「日本一の奇祭」を目指す活動は必ずしも順風満帆ではなかった。多くの住民から賛同を得るのは容易ではなく、資金集めにも苦労したという。

 しかし、徐々に祭りの奇抜さや迫力が県内外の写真家や外国人らの人気を集め、多い年には約2000人もの観客が訪れた。奇祭を開催する他県の「同志」との交流も生まれた。

 栃尾観光協会の島和久次長(55)は「大きなうねりとなってここまで続き、全国的に有名になったことはうれしい限り。印象的な見た目の一方で、道祖神の信仰に基づくまじめな祭りでもある。これからも栃尾らしい、栃尾にしかない祭りとして続いてほしい」と話す。

継続方法模索

 一方、集落の過疎化は歯止めがきかず、祭りの継続には困難も多い。当初20人以上いた実行委員は半減し、ほとんどは60~70歳代と高齢だ。星野さんは「風前のともしびに近い」と危機感をあらわにする。

 それでも、コロナ禍を経て5年ぶりとなった45回目の今年は、継続可能な方法を模索するため、ほだれ様の代わりに一回り小さい木彫りで代用するなど、規模を縮小して開催した。

 一から作り上げたという自負を持つ星野さんにとって、ほだれ祭は我が子のような存在だ。「参加して楽しかったと言ってもらえる祭りになった。『面白いことをしている』と遠い所から来てくれる人がいて、それが楽しい」と目を細めている。(徳井観)

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