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「病的ひきこもり」かどうか、12の質問でチェック…要支援やうつ病など早期発見へ

読売新聞 / 2024年9月6日 16時0分

加藤隆弘准教授=本人提供

 九州大医学部の加藤隆弘准教授(精神医学)のチームが、外部の支援が必要な「病的ひきこもり」に該当するかを判定できるチェックシート(質問票)を開発した。計12項目の質問に回答することで、ひきこもりの程度を見定め、精神科医らに支援を仰ぐべきかどうかを判断できるという。早期に発見することで、うつ病やゲーム障害などの予防につながると期待される。(中村直人)

 国はひきこもりを「会社や学校に行かないなど、社会参加を避け、半年以上にわたり家にとどまる状態」と定義している。内閣府が昨年公表した調査結果によると、近所のコンビニ店などに出かける場合も含めた「広義のひきこもり」は、全国に約146万人(15~64歳)いると推定される。

 九大のチームは生活に支障が出ているか、本人や家族が苦悩している場合を「病的ひきこもり」と呼び、在宅ワークやオンライン授業などで外出頻度が少ない人と区別するよう提唱している。ただ、これまで一般の人が自己評価できる手段がなかったという。

 質問票では直近の1か月の外出頻度を尋ね、「合計1時間以上の外出」が週3日以下の場合を「物理的ひきこもり」と定義。こうした期間が、3か月~半年続くと「プレひきこもり」、半年以上は「ひきこもり」に該当するとした。

 これらの質問を踏まえ、「寂しい感じや、孤独な感じがあるか」「家族との関係に支障が出ているか」といった七つの問いを設け、一つでも当てはまれば「病的」な可能性があると判定する。追加で専門家による10~20分程度の面接を受けることで、より正確な評価が可能になるという。

 過去の研究では、ひきこもりは始まってから支援を受けるまでに平均で4年もの長期間を要している。「病的ひきこもり」はうつ病や統合失調症などの精神疾患が関わっているケースがあるほか、家庭内暴力などの深刻な事態に発展する恐れもあるため、早期に発見し、適切な治療を行うことが急務となっている。

 コロナ禍によってひきこもり状態の人が増えたとの見方もある。

 加藤准教授らがオンラインで行った調査では、コロナ前の2019年6月時点でひきこもりではなかった社会人約560人のうち、3割以上がコロナ禍の20~22年に一度はひきこもり状態(「物理的ひきこもり」を含む)を経験していることが分かった。内閣府が昨年公表した調査結果でも、ひきこもりになった理由について、約2割が「コロナの流行」を挙げていた。

 質問票は今年2月からウェブサイトに掲載し、公表している。加藤准教授は「コロナ禍を経て一部の人は病的な状態に陥っている可能性があり、早期の支援が必要だ。(質問票を)学校や職場の健診などで活用してほしい」と話している。

 質問票は研究室のウェブサイト「ひきこもり研究ラボ@九州大学」(https://www.hikikomori-lab.com)で公開している。

当事者平均35歳、期間10年

 ひきこもりの家族らを支援するNPO法人「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」(東京)の調査によると、当事者の平均年齢は調査を始めた2000年代は20歳代後半だったが、年々高くなる傾向にあり、22年度は35歳となった。ひきこもり期間は平均で約10年となっている。

 ひきこもりに詳しいジャーナリストの池上正樹さんは「周囲に理解者がおらず、『誰にもわかってもらえなかった』『裏切られた』という気持ちが長期のひきこもり状態につながる傾向がある」と指摘。その上で、「ひきこもる人の気持ちに寄り添い、向き合う姿勢が大事になる。家族らが周囲に悩みを相談したり、助けを求めたりしやすい環境の整備が求められる」と話している。

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