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引きこもりから世界の頂点へ…金メダルの和田なつきが卓球から得た大切なもの

読売新聞 / 2024年9月6日 19時15分

卓球女子シングルで金メダルを獲得し、観客の声援に応える和田なつき選手(5日、パリで)=古厩正樹撮影

 【パリ=松本慎平】引きこもりだった少女が世界の頂点に立った。パリ・パラリンピック卓球女子シングルス(知的障害)で優勝した和田なつき選手(21)は不登校を経験したが、卓球を通じて自身の殻を破り、社会人アスリートへと成長した。卓球女子初の金メダルという偉業を達成し、同じ境遇に悩む子どもたちに向けてパリから呼びかけた。「勇気を出して一歩踏み出してほしい」

 5日の準決勝、決勝は、練習で培った精神力の強さを発揮した。準決勝は、世界ランキング1位の選手に「あと2失点で敗戦」というところまで追い込まれながら連続5得点で逆転。決勝は、球に逆回転をかけて粘る東京大会金メダリストを相手に粘り強く返球し、我慢比べを制した。

 大阪府松原市出身で、小学3年生の時から家に引きこもった。いじめなどで荒れる学級に心身が耐えられず、一時は歩くことさえできなくなった。

 家族の励ましを受け、中学2年生の頃から、少しずつ外出した。「大阪市長居障がい者スポーツセンター」に出かけ、水泳の合間に卓球をやってみたのが、競技人生の出発点。試合を楽しむ大人に交ぜてもらい、負けると悔しくて、週1回、卓球場に通い始めた。

 通信制高校に入ると、それが週5回になり、小学生と一緒に基礎練習からやり直した。「好きなことは卓球しかなかった」と、卓球場が学校代わりになった。

 安定したラリーを武器に、18歳で出た2022年のパラ卓球の国内大会で準優勝し、23年は優勝。「優勝すれば内定」という同年のアジア大会でも優勝し、一気に代表の座を手に入れた。パリに向けた練習では、成功や失敗の理由を「自分で考える」習慣をつけ、冷静さと集中力を高めた。

 卓球での成長は、社会人としての可能性も広げた。23年秋、アスリート採用で教育関連商社「内田洋行」への就職を決め、地元・大阪の支店に配属された。「競技への熱い思いと、仕事にも前向きに取り組もうとする姿勢」が評価された。

 今も時折、心に不安が押し寄せるが、受け流し方も上達した。大会中、重圧から泣いてしまうことが何度かあったが、「思い切り泣いてリセットし、次どうしようと考える」ことで乗り切った。

 優勝後、記者たちの前で堂々と質問に答えた。「今は自分に自信が持てる。卓球のおかげで『私は私』と考えられるようになった」。金メダルと同じぐらい大切なものを得た大会となった。

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