日韓首脳会談 後戻りしない関係目指したい
読売新聞 / 2024年9月7日 5時0分
「戦後最悪」とまで言われた日韓関係が改善基調となったのは、岸田首相と尹錫悦韓国大統領という両首脳の政治決断によるところが大きい。
この流れを定着させて、互いに信頼できる隣国として協力を深めていくことが重要だ。
首相がソウルを訪問し、尹大統領と会談した。日韓国交正常化から60年となる来年を見据えて、経済や安全保障、青少年交流など幅広い分野で協力事業を進めていく方針で一致した。
また、第三国の情勢が悪化して日韓両国ともに現地の自国民を退避させる必要が生じた場合、相互に協力して輸送手段を利用し合うことでも合意した。
両首脳の会談は12回目だ。互いの国を往来する日韓の「シャトル外交」としても5回目で、いずれも異例の多さと言える。
在任中としては最後となる今回の首相の訪韓は、自らが退任した後も日韓関係を後戻りさせないよう、道筋をつける狙いがある。
中露に加えて、北朝鮮も核を保持しているとされる。日本の安全保障環境がかつてなく不安定化している中で、韓国と良好な関係を保つことは、日本にとって死活的に重要である。
日韓関係は、尹政権が昨年3月、元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)訴訟問題に関する解決策を示したことがきっかけで好転した。
韓国政府傘下の財団が、被告の日本企業に代わって賠償金相当額を支払うという内容で、これまでに元徴用工の家族ら15人中、11人がお金を受け取った。
解決策の提示後には、両国ともに厳格化していた輸出管理を緩和し、経済界の交流も再開した。
東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出について、尹政権は「科学的に問題はない」と理解を示してきた。
両政府間の関係改善は、国民感情にも好影響を与えている。読売新聞と韓国日報が今年5月に行った共同世論調査では、日韓関係の現状を「良い」とした人は、日本は13年ぶりに5割台となり、韓国も2年連続で4割を超えた。
ただ、こうした潮流が逆転しかねない要因も残っている。
元徴用工訴訟問題では、4人の原告が韓国政府の解決策を拒み続けている。このほかにも韓国の裁判所では、日本企業に賠償を命じる判決が次々と出ている。
尹氏の任期は2027年まであるが、野党は尹氏の対日政策を「屈辱外交だ」と批判しており、政権基盤は盤石とは言えない。
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