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暴力団の組事務所400件撤去…福岡県警の工藤会「頂上作戦」から10年、公的機関関与で声上げやすく

読売新聞 / 2024年9月7日 9時21分

 全国の暴力団組事務所が2014~23年で計約400件撤去されたことが警察庁への取材でわかった。福岡県警が全国唯一の特定危険指定暴力団・工藤会(本部・北九州市)のトップらを逮捕した「頂上作戦」着手から11日で10年。頂上作戦が契機となって暴力団排除の機運が高まるとともに、公的機関が積極的に関与することで撤去が進んでいる。

市が売却先探し

 「近くに全国チェーンの飲食店が進出するなど、子どもも歩ける明るい場所になった」。同会の旧本部事務所「工藤会館」跡地で複合型福祉施設を建設する計画を進めるNPO法人「抱樸」の奥田知志理事長(61)は8月下旬、感慨深げに語った。

 JR小倉駅南東約2キロの住宅街にあった工藤会館には、黒塗りの車とともに組員らが出入りし、長年、工藤会を象徴する存在として恐れられた。しかし、頂上作戦着手後、使用は制限され、19年に福岡県内の民間企業に売却された。同会側が得た売却益は全額、同会が関与した市民襲撃事件の被害者側に支払われ、抱樸が20年4月、同社から跡地を購入した。

 一連の“売却劇”で、工藤会側との交渉窓口となったのは北九州市。同会の売却先探しも市が行う行政が前面に出る形だった。当時、副市長として約9か月にわたり交渉を主導した梅本和秀さん(69)は「行政が入ることで信用が生まれ、何とか買い手が見つかった」と振り返る。

 建設が予定される施設は、生活保護受給者向けの救護施設や住民らが集うホールなどを備えた3階建ての計画で、奥田理事長は「『怖い街』と言われてきた北九州を住みたいと思える街に変えたい」と語る。

ノウハウ共有

 警察庁は組事務所の総数を明らかにしていないが、住民側の意向などを受け、頂上作戦に着手した14年から23年までに撤去された組事務所は全国で計407件。年別の撤去数は14年は41件で、16年は最多の62件。17年56件、18年52件と続き、20年以降は徐々に減った。都道府県警別の最多は警視庁の68件、次いで工藤会など全国最多の五つの指定暴力団が本拠を置く福岡が63件。兵庫35件、大阪29件、愛知と北海道が各23件などと続いた。警察幹部は「『頂上作戦』は全国の暴排機運を高める結果となり、事務所撤去にも大きな後押しになった」と分析している。

 福岡県でも撤去は進む。同県警によると、同期間に撤去された5指定暴力団の事務所は49件で、うち工藤会は最多の28件。道仁会(福岡県久留米市)は6件、浪川会(同県大牟田市)は5件だった。

 同県警は事務所撤去に関し、他県警などから手法などについて問い合わせを受けたり、全国的な会議で事例を発表したりしている。ある県警幹部は「全国で撤去に関するノウハウが共有、蓄積されている」と打ち明ける。

「代理訴訟」活用

 住民に危害が及ばないようにするため、公的機関が前面に出るケースも目立つ。福岡県暴力追放運動推進センターは、住民の代わりに訴訟を起こせる「代理訴訟制度」を活用し、20年10月、浪川会の本部事務所について、使用差し止めを求める仮処分を申し立てた。この裁判がきっかけとなり、21年7月に事務所は解体された。大阪府東大阪市にあった特定抗争指定暴力団・山口組の2次団体事務所も、「代理訴訟」で撤去に追い込み、撤去完了後の22年12月に東大阪市が跡地を購入した。

 自治体が自ら仮処分を申し立てるケースも出た。福岡県福津市にあった特定抗争指定暴力団・神戸山口組系組事務所については、22年12月、同市が事務所の使用を禁じる仮処分を申し立て、撤去につながった。また、静岡県吉田町では19年12月、県警、県弁護士会、県暴力追放運動推進センターで協議会を設置して、山口組の2次団体事務所が立ち退いた。かつて同県浜松市で組事務所撤去運動に取り組んだ住民側のリーダーだった同市の水野栄市郎さん(82)は「公的機関が大きく関与することで、住民も安心して声を上げやすくなっているように感じる」と語る。

 日本弁護士連合会民事介入暴力対策委員会幹事を務める疋田 きよし弁護士(大阪弁護士会)は「危険な暴力団として知られた工藤会を弱体化させたことは、住民らが勇気を出して暴力団排除に動く動機付けになった。今後も状況に応じた手法で、事務所撤去を含む暴排を推し進めるべきだ」としている。

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