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鯨食文化の継承へ「鯨骨らぁめん」、だしやチャーシューも鯨から…「山口の新たなソウルフードに」

読売新聞 / 2024年9月7日 16時0分

山口県内の店舗でメニューに加わった「長州鯨骨らぁめん」。左は袋麺

 商業捕鯨の拠点で鯨食文化が継承されている山口県下関市などで、鯨の軟骨からスープのだしを取ったご当地ラーメンがお目見えした。県飲食業生活衛生同業組合が開発した「長州 鯨骨 げいこつらぁめん」で、語呂合わせで「くじらの日」とされる9月4日から県内14店舗で提供。同組合は「ラーメンをはじめ、鯨料理を求めて国内外から観光客が訪れる地域にしたい」と意気込んでいる。(小野悠紀)

 ニタリクジラの軟骨と、同県長門市のブランド鶏「長州どり」のだしを合わせたしょうゆベースのスープ。細麺を使い、鯨肉のチャーシューやベーコン、コリコリした食感の軟骨を薄く削ったものをトッピングしているのが「長州鯨骨らぁめん」の特徴だ。

 開発の中心となったのが、同組合宇部支部長で日本料理店を営む明徳親典さん(53)と、同支部理事でラーメン店や居酒屋を経営する野上裕太さん(37)。野上さんは「幅広い層の人たちに食べてもらえるように工夫し、唯一無二のものができた」と胸を張る。

 スープ作りで課題となったのが、鯨肉独特の強い臭みだった。2人は2022年夏頃から店の営業時間外に集まり、様々な部位の骨や肉を使って30回以上試作した。臭みが取れずに苦戦が続いたが、ニタリクジラの上あごの軟骨から、魚介類のように濁りの少ないだしが取れることを発見。長州どりのだしを加え、深みのある味わいに仕上げた。

 スープは味を統一させるため、県内の食品製造会社が一括して調理する。細麺の使用、鯨肉のチャーシューなどを載せるといった条件を満たせばあとは自由で、鯨料理の「ハリハリ鍋」に欠かせない水菜やレモンを添える店もあるという。提供価格は1000円前後で、4日から県内のスーパーや道の駅で袋麺(税別330円)も販売している。

 現在、取り扱っているのは下関、宇部、山口、周南市などの14店舗にとどまるが、明徳さんは「提供する店が増え、山口の新たなソウルフードに育ってほしい」と期待を膨らませる。

 「長州鯨骨らぁめん」の開発に乗り出した背景には、鯨肉の消費低迷がある。山口県では戦前から下関市に捕鯨基地があったため、鯨の刺し身や竜田揚げ、ハリハリ鍋などを味わう文化が受け継がれてきたが、全国的には需要は減り続けている。

 こうした中、今年3月には、世界で唯一、母船と小型船が船団を組んで捕鯨を行う「共同船舶」(東京)の新母船「 関鯨 かんげい丸」が完成し、下関市はその母港になっている。母船の建造に合わせ、同組合は数年前から消費拡大と新たな観光資源の開発を目指し、若い世代も親しみやすいラーメンやカレーなどの鯨料理を研究してきた。

 同組合の青木光海理事長(63)は「鯨料理は地元で古くから親しまれてきたが、若い世代にとっては新しい料理でもある。山口から発信し、多くの人たちに豊かな食文化に触れてもらいたい」と話している。

 ◆商業捕鯨=商売目的で鯨を捕ること。日本は1987年、商業捕鯨から調査捕鯨に切り替えたが、2019年6月末に国際捕鯨委員会(IWC)を脱退し、同年7月に商業捕鯨を再開した。国内での鯨肉の消費量は1962年度の約23万トンをピークに減少し、2022年度は約2000トンにとどまった。

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