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日鉄の買収計画 米政府の阻止は理解出来ぬ

読売新聞 / 2024年9月8日 5時0分

 バイデン米大統領が、「安全保障上」の理由で日本製鉄による鉄鋼大手USスチールの買収計画を阻止する方針という。同盟国の日本に対する理解しがたい判断だ。

 日本製鉄は昨年12月、約2兆円の買収額で、USスチールを買収する計画を発表した。

 米政府の対米外国投資委員会(CFIUS)が審査を行った結果、「克服できない国家安全保障上の懸念を生じさせる」として、買収計画を承認しない勧告を行うと伝えられている。

 こうした勧告は、これまでは多くが中国企業について行われてきた。日本企業は初という。バイデン氏はこの勧告を受け、買収計画の中止を命令する見通しだ。

 中国の安価な鉄鋼製品が世界にあふれる中、外資に買収されれば、インフラ整備に不可欠な鉄鋼の生産基盤が損なわれることなどを理由にするとみられている。

 しかし、USスチールは、設備の老朽化などによって競争力が低下し、支援を必要としているのが実情だ。買収が失敗すれば、数千人の雇用を危険にさらし、一部の製鉄所の閉鎖や本社の移転を迫られる可能性すら指摘している。

 日本製鉄の先端技術や資金を活用し、国際競争力を高めれば、むしろ米国内での生産基盤の強化につながるだろう。米政府の方針は著しく説得力を欠いている。

 日本製鉄の経営戦略にとって深刻な打撃になることも見過ごせない。国内市場が縮小する中、米国での電気自動車の普及に伴う鋼材需要の増加を踏まえ、生産拠点を強化する狙いがあったからだ。

 安全保障環境が厳しくなる中、米国にとって、日本は最も重要な同盟国であるはずだ。日本からの投資を阻止すれば、日米間の信頼関係にも傷がつきかねない。

 また、日米は、経済安全保障の観点から、過度な中国への依存を改めるために、半導体などで供給網の再構築を進めてきた。連携を深める際の障害にもなろう。

 今回の措置は、大統領選でハリス副大統領とトランプ前大統領の接戦が続く中、激戦州の労働者にアピールする狙いがある。

 USスチールの本社があるペンシルベニア州のピッツバーグは、「ラストベルト(さびついた工業地帯)」の代表的都市で、買収に強く反対している全米鉄鋼労働組合の本部もあるからだ。

 だからといって問題を政争の具とするのは筋違いだ。日米の両政府は 真摯 しんしに話し合って、打開策を探るべきである。

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