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西山繭子さん アフリカのテロ事件が起きたとき、父の伊集院静は世界一周旅行に「絶対行かせない」と言った

読売新聞 / 2024年9月13日 15時15分

『八十日間世界一周』ジュール・ヴェルヌ著/田辺貞之助訳(創元SF文庫) 792円

 自身が生まれる前に作家の父、伊集院静さんは家を出て、西山さんは母と姉とともに東京で育った。「父親と一緒の幼いころの写真は一枚もありません。『父は外国にいる』と言われたこともありました」

 父の姿を初めて目にしたのは、新刊が出て新聞に写真が載ったときだ。「母に『この人お父さん』と教えてもらいました。音楽番組でテレビに出たのを見たときもあったかな」と話す。

 母は子どもが小さなときは家でできる洋裁の仕事を、大きくなってからは加えて保険外交員をして働いた。昭和の終わりから平成初めにかけ、携帯電話やスマートフォンがなかった少女時代は本は今より身近だった。

 征矢清・作の童話『まゆこのるすばん』やアメリカの児童文学作品『エルマーのぼうけん』が好きだった。「トム・ソーヤーの冒険」や「小公女セーラ」などを放送したテレビアニメ「世界名作劇場」も楽しみだった。

 フランスの作家、ジュール・ヴェルヌの『八十日間世界一周』はおそらく、子ども向けに読みやすくしたものを手に取ったという。「世界名作劇場などを通じて、外国への憧れが生まれたんだと思います。今読み返してもすごく楽しい作品です」

 ロンドンのある男性が1872年、当時各地で発達してきた船や鉄道などを使い、80日で世界一周できるか仲間とかけをする。ヨーロッパ、インド、アジア……大急ぎの旅が続く。

 「主人公は日本にも来ますよね。ヴェルヌはもちろん訪れたことはないのに、魅力的に書けたのもすばらしいと思います」

 普段の西山さんは、知的で快活な雰囲気だ。子ども時代の思い出や父のことを語る際も影を感じさせない。「母は父のことを悪く言ったことがありません。父の事務所を手伝うか迷ったときも、『年を取って不安なのよ。力になってあげて』と言ってくれた」と語る。

 その娘を、父は自分の形で愛したのだろう。大人になってから、世界一周旅行を薦めてくれたことがあった。チケットを取ったが、出発直前の2013年1月、アルジェリアの天然ガス関連施設がイスラム武装勢力に襲われる事件が起きる。すると、「絶対、旅には行かせない」。 () (ぜん)と言い放った。(待田晋哉)

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