ロンドン響を率いる指揮者アントニオ・パッパーノ…名人集団をさらなる高みへ
読売新聞 / 2024年9月13日 17時0分
先ごろ英国ロイヤル・オペラを率いて日本公演を行った英国出身の指揮者、アントニオ・パッパーノ(64)が今月、ロンドン交響楽団を引き連れて再び来日する。オペラとシンフォニーの両方で名匠の技を堪能できる「当たり年」になりそうだ。(松本良一)
7月に22年間音楽監督を務めたロイヤル・オペラの任期最後の公演を日本で迎えたばかり。「日本の聴衆は謙虚に耳を澄ましてくれるからありがたい。ホールも素晴らしい」。オーケストラの響きをとことん追求する上で、日本の公演環境は極上と称賛する。
ロイヤル・オペラ退任と入れ替わりに、今月から名門・ロンドン響の首席指揮者に就任した。「オペラハウス以外の場所で、よりシンフォニックな響きを掘り下げたいと思っていた」。願ったりかなったりのタイミングだ。「音楽の表現は徹底して具体的でなければいけない。それを実現するのは何よりも響きと音色。そこにこだわりたい」
物語のあるオペラと異なり、純粋音楽のシンフォニーの音色作りでは、オーケストラの奏者一人ひとりが音色について考える必要があると言う。「特に音楽の土台を支える低音楽器の色彩感は重要。ロンドン響は何でもできる名人の集団ですが、さらなる高みをめざしたい」と話す。
今回の来日公演は、サンサーンスの交響曲第3番「オルガン付き」(26日)とマーラーの交響曲第1番「巨人」(27日)がメインとなる。「古典的な枠組みと神々しさを備えた『オルガン付き』と、近代人たる作曲家の苦悩を吐露した『巨人』は対照的な作品。天使の音色と自然の響き、生と死……。2作のコントラストに注目してほしい」と自信たっぷりだ。
長年世界各地の劇場やコンサートホールで仕事をしてきたが、今後は生まれ故郷のロンドンでヴォーン・ウィリアムズなど英国音楽にじっくり取り組むと話す。「自国の伝統をおろそかにはできない。17世紀のウィリアム・バード、オーランド・ギボンズから、現代のジョージ・ベンジャミン、トーマス・アデスまで、やりたい曲はたくさんある」。ゴールの年はスタートの年でもあるようだ。
26、27日共に午後7時開演。東京・赤坂のサントリーホール。ほかに人気ピアニスト、ユジャ・ワンの独奏で、ラフマニノフのピアノ協奏曲第1番(26日)、ショパンの同第2番(27日)など。(電)050・3185・6728。
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