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中国の菓子「月餅」、甘くない商戦…汚職撲滅へ高級品販売規制・経済低迷で購買意欲落ち込み

読売新聞 / 2024年9月10日 21時8分

北京市内の百貨店に特設された月餅売り場。手に取る客はほとんどいない(8月30日、北京で)=大原一郎撮影

 中国で今月17日の中秋節を前に、満月をかたどった菓子「月餅」の商戦が強い逆風にさらされている。高額の贈答用として重宝されてきた秋の風物詩だが、汚職摘発を進めた 習近平 シージンピン政権による締め付けが一段と強まったためだ。(北京 山下福太郎)

 北京市の繁華街・王府井の百貨店の特設売り場には、赤や金色など鮮やかな箱に入った数十種類の月餅が並ぶ。8日午後は週末にもかかわらず客足はまばらだった。月餅は贈答用の需要が全体の9割を占めるとされるが、30歳代の女性会社員は「今年は自宅用しか買わない」と語った。女性店員は「売れ行きは昨年の半分程度。不景気を感じます」と肩を落とす。

 「史上最も寒い中秋節」と中国のネットメディアは伝えている。月餅の業界団体の推計によると、今年の商戦は1箱70~220元(約1400~4400円)が中心価格帯で、昨年の80~280元よりも大幅な低下が見込まれている。全体の売上高は昨年より1割弱少ない200億元、生産量は2万トン減の30万トンと予想される。

 経済の低迷で、消費者の購買意欲は落ち込んでいる。経済誌「財経天下」によると、南部・広州市のホテルでは従業員に1人2万元の販売目標が課せられ、ある女性従業員は、自腹で購入した1000元分を含めてもノルマの1割に満たず就寝中に月餅を売る夢でうなされたという。従業員に毎年月餅を配ってきた上海市のある日系企業は今年、例年より3割安い100元の品を選んだ。

 習政権の統制も、月餅商戦の低迷に追い打ちをかけている。かつて高額化が進み、フカヒレやツバメの巣を原材料にしたほか、金品を同封したり住宅が付いたりといった超高級品まで登場した経緯があり、汚職撲滅を掲げる習政権は月餅がその温床だとみなし、矛先を向けてきた。

 中央政府の4部門は2022年6月、全12条の月餅規制を策定し、締め付けをさらに強めた。別の規制も含めれば、▽500元以上の月餅を重点的に監視▽包装は3層まで▽包装費は価格の15%以下▽他の商品との抱き合わせ販売の禁止――などが定められている。

 22年は独占禁止当局に当たる国家市場監督管理総局などが延べ20万人の職員を動員し、全国3万超の販売店に月餅の立ち入り調査をした。違反すれば商品の撤去を求められ、今年も各地で同様の措置が取られている模様だ。

 政府は今年、国内総生産(GDP)の4割を占める個人消費の活性化に向けて自動車や家電など高額品を対象に補助金の支出を始めた。月餅への締め付けを強めすぎれば、景気の足をさらに引っ張りかねない面もある。

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