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海保が太平洋島しょ国と関係強化、パラオ幹部候補が「日本留学」へ…海洋秩序安定へ人材育成・交流

読売新聞 / 2024年9月11日 15時0分

 東南・南アジアから海上保安当局の幹部候補を日本に招き、海洋を巡る法や実務を学ぶ「海上保安政策プログラム(MSP)」に、アジア以外で初めて太平洋 島嶼 とうしょ国のパラオが職員を派遣することがわかった。南太平洋では中国が影響力を強める。海上保安庁は米国や豪州と連携し、海洋秩序の安定と島嶼国との関係強化に向け、パラオ以外にも参加への働きかけを続ける。

 MSPは2015年、東南アジアを主な対象に始まった。近年、沖縄県・尖閣諸島周辺や南シナ海で緊張が高まる中、海保当局の人材育成と交流を通じ、力ではなく法とルールによる海洋秩序の重要性を共有する貴重な機会となっている。

 参加者は自国での選考や入学試験を経た後、毎年10月~翌9月、政策研究大学院大(東京)と海上保安大学校(広島)に通い、国際海洋法や救難防災政策などの専門知識を英語で学ぶ。論文審査を受けて修士(政策研究)も取得する。

 来月からの「10期生」にパラオから来日するのは、海上警備部門に所属する30歳代の男性職員。台湾への長期留学の経験があり、島嶼国の海保当局では該当者が多くない「大学卒業程度」「海保当局に3年以上勤務」などの参加要件を満たした。

 南太平洋は、資源や食料を供給する豪州から日本や米国への海上交通路(シーレーン)の要衝にあたる。この海域の安定を図るため、海保はパラオなどに対し、能力向上支援の専従部門「モバイルコーポレーションチーム(MCT)」を19年から定期的に派遣し、海難救助訓練などの直接支援を続けてきた。今年7月には両国の巡視船による合同訓練もパラオ沖で実施した。

 こうした活動を通じ、MSPでの幹部育成に対する理解がパラオ側で進んだとみられ、海保は周辺の島嶼各国にも参加を働きかける。

海洋秩序維持へ信頼築く

 アジア諸国から海上保安当局の幹部候補を招く「海上保安政策プログラム(MSP)」には、1年間寝食を共にして信頼関係を築き、帰国後も人的ネットワークを維持する狙いがある。

 「本音」の意見交換を通じ、関係国間で海洋の安全確保に向けた施策が円滑に進むメリットは大きい。フィリピン沿岸警備隊では、MSP1期生が歴代最年少の准将として国際舞台で活躍する。

 こうした特長を太平洋 島嶼 とうしょ国でも生かすため、海上保安庁は数年前から各国に参加の呼びかけを行い、今回初の実現に至った。

 一方で、太平洋への進出を図る中国は、経済支援などを通じて島嶼国への影響力を強め、日本近海と同様に海洋調査船などを活発に運用している。海保には、島嶼国からMSP参加を継続的に取り付けることも含め、法に基づく海洋秩序の維持・強化に向けた努力が引き続き求められる。(森田啓文)

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