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「1年間にわたり絶食できる」メコンオオナマズ、重さ300キロの淡水魚…不思議な生態解明へ

読売新聞 / 2024年9月12日 14時3分

メコンオオナマズについて語る池谷さん(岐阜県各務原市の「アクア・トトぎふ」で)=菅野靖撮影

 世界最大級の淡水魚メコンオオナマズは1年間にわたって絶食できる――。岐阜県各務原市の水族館「アクア・トトぎふ」の館長池谷幸樹さん(53)が今年、こうした研究結果をまとめた論文を発表した。10年超にわたる観察で明らかになった不思議な生態の一端。今後、絶食のメカニズムの解明を目指す。(岐阜支局 杉本奏)

 メコンオオナマズは、東南アジアのメコン川流域にだけ生息し、大きい個体で体長3メートル、重さ300キロにもなる。寿命は60年とも言われるが、開発や乱獲で絶滅の危機にひんし、その生態は謎に包まれている。

 200種類以上の魚類や両生類などを飼育する世界有数の淡水魚水族館の同館でも、目玉展示の一つだ。2004年の開館時、タイの水産試験場から6匹を譲り受けた。

 飼育を任されたのが、当時主任だった池谷さんだ。「絶対に死なすわけにいかない」と、1個30グラムの配合飼料の団子を何個食べたかを観察し続けると、突然全く食べなくなることがあった。

 「病気になったのかも」と慌てたが、絶食以外の異常はみられず、飼育スタッフらと17年まで観察を続けたところ、6匹のうち5匹は1か月以上にわたり何も食べない時期が確認された。中でもオスの1匹は315日間の絶食を記録した。

 絶食のパターンを解析すると、周期はほぼ1年だった。メコン川流域では、雨期にエサのシオグサが不足するため、進化の過程で適応した可能性があるという。京都大のチームと研究についてまとめた論文は、今年1月に日本魚類学会英文誌の電子版に掲載された。

 エサの記録は今も水族館のスタッフがとり続け、池谷さんは解析を担う。メコンオオナマズは自分で絶食のスイッチを入れ、省エネモードに入ることができる――。池谷さんはそんな仮説を立てて、4月から北里大と共同研究の準備を進めている。同大では、水温の高い夏に「夏眠」し、絶食することで知られるイカナゴの研究をしており、共通点を探る。

 「私にとってメコンオオナマズは生命の神秘を教えてくれる存在」と池谷さん。「人間のダイエットに役立つ発見があるかもしれません」と笑った。

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