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自宅に大麻、陽性反応でも無罪判決…「使用罪」創設前で所持は「女性が陥れた可能性」

読売新聞 / 2024年9月12日 5時0分

 自宅から大麻が見つかり、2022年に大麻取締法違反(所持)で逮捕・起訴された20歳代の男性について、東京地裁が今年7月に無罪判決を言い渡したことがわかった。男性は捜査段階で容疑を認めたが、公判では起訴事実を否定し、判決は所持を裏付ける証拠が不十分だったと指摘した。一方、男性の体内からは大麻の陽性反応が出ており、男性は捜査・公判を通じて大麻の使用を認めたものの、「使用罪」創設前の摘発だったため、罪に問われなかった。

 薬物事件の刑事裁判で、起訴された人物の自宅で見つかった薬物について、本人の所持の認識が否定され、無罪となるのは異例。

 確定判決などによると、警視庁は外部からの情報提供に基づき、22年10月3日に男性の自宅を捜索し、大麻が入った袋を12個押収した。逮捕された男性は、捜査段階で「大麻は自分のものだ」と自白。大麻を使用したことも認めた。

 男性はその後、東京地検に起訴されたが、公判では「大麻はナンパで知り合った女が知らないうちに置いていった」と否認に転じた。この女性と一緒に大麻を使ったと認めつつ、「女とは金銭や男女関係のトラブルがあり、恨まれる心当たりがあった」と訴えた。

 弁護人は、2人のLINEを証拠提出。男性が捜索を受けた直後、スマートフォンで女性に〈ショックだよ そう言うことだったのね〉と送信し、金銭や男女関係のトラブルがあったことを示すメッセージもあったことから、「ぬれぎぬ」を着せられたと主張した。

 証人尋問で、捜査を担当した警視庁の警部補は、男性のスマホについて「解析結果がない」と説明し、十分な捜査が行われていなかったことをうかがわせた。地裁は検察側に対し、「キーマン」となる女性の証人出廷を求めたが、調整がつかず、証言が得られないまま結審した。

 7月10日の判決で細谷 泰暢 やすのぶ裁判官は、男性と女性が共同で所持していた疑いは残るとしたものの、LINEのやり取りなど客観証拠が残り、女性の証言がないことも踏まえ、「女性が情報提供者で、男性を陥れた可能性がある」と判断。男性から陽性反応が出たとの事実を認定した上で、無罪を言い渡し、検察側の控訴断念で判決は確定した。

 ある検察幹部は「判決を覆すのは困難だと判断した」と述べた。一方、弁護人の戸塚史也弁護士は「疑わしきは罰せずという刑事裁判の大原則に基づいた判決だ」と語った。

 刑事裁判官の一人は「捜査当局は、少なくともLINEを丁寧に見ていれば、自白の裏付け捜査の必要性に思い至ったのではないか」と指摘。「自白に頼るのではなく、客観証拠を踏まえて調べることが肝要だということを改めて示すケースだ」と述べた。

改正法は12月12日施行

 大麻は乱用すると幻覚などを引き起こし、覚醒剤など別の違法薬物へと誘引する「ゲートウェー・ドラッグ」とされている。若者への 蔓延 まんえんが社会問題となる中で、昨年12月に大麻取締法と麻薬取締法がそれぞれ改正され、「使用罪」が新設された。厚生労働省は11日、改正法の施行日を今年12月12日と発表した。

 大麻取締法はこれまで、所持や譲渡を禁じる一方、使用を罰する規定は設けられていなかった。国はその理由について、2008年の国会答弁で「(合法的な)大麻の栽培農家が、大麻を刈る作業で吸引する場合もある」としていた。

 一方、警察庁によると、警察が大麻事件で摘発した人数は21年まで8年連続で増加。昨年の摘発人数は過去最多の6482人に上り、記録が残る1958年以降で初めて覚醒剤事件を上回った。このうち73・5%を20歳代以下が占めており、若年層への蔓延に歯止めをかけるため、使用を罰する方針にかじを切った。

 施行日以降は、大麻の所持が立証できない今回のようなケースでも、尿検査で陽性反応が出た場合などには罪に問われる可能性がある。また、改正法では、大麻草から製造した医薬品については使用を認めた。

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