食品に鼻汁、商品をバカ食い...「バイトテロ」予防に新卒採用の「オヤカク」が効果あり?/マイナビ・三輪希実さん
J-CASTニュース / 2024年9月11日 19時51分
SNSで炎上…(写真はイメージ)
鼻をほじった指を店の食品にすりつける「悪ふざけ」動画をSNSに投稿、炎上させる......。
こんなアルバイト従業員による「バイトテロ」が問題になっているが、その予防としてアルバイト採用で「オヤカク」を導入する企業が増えていることが、就職情報サイトのマイナビ(東京都千代田区)の調査でわかった。
「オヤカク」といえば、新卒採用時に内定の受諾を親に確認するものだが、アルバイト採用時にも効果的だという。調査したマイナビ研究員の三輪希実さんに話を聞いた。
SNSが使用でき「バイトテロ」可能な職場が、半数以上
この調査は「アルバイト採用活動における企業の『オヤカク』の現状と目的を考察」(2024年9月4日付)というリポートにまとめられている。
マイナビがアルバイト採用でも行われている「オヤカク」の実態を調査したのは今回が初めてだ。
調査(2024年5月1日~7日)は、企業の非正規雇用採用を行なった人事担当者919人が対象。まず、18歳以上の成人している高校生・大学生のアルバイト採用時に保護者に連絡をしているかを聞くと、連絡している企業が4割(40.0%)に達した【図表1】。
その理由と目的を聞くと(複数回答可)、「保護者の「同意が取れているかを確認して、トラブルになることを防ぐ」(46.2%)が一番多かったが、「バイトテロを防ぐため」(22.2%)も2割以上あった【図表2】。
バイトテロとは、アルバイト従業員が勤務先の商品や備品を使用して悪ふざけなどの不適切な行為を動画に撮り、SNS上に投稿することで企業の評判・イメージを著しく損なう行為をいう。食品店の賞味期限が切れたホイップクリームをバイト仲間の口に押し込む動画が拡散したことも記憶に新しい。
そこで、アルバイトが勤務時間中にSNSを使用することが可能な職場を聞くと、52.1%と半数以上あった【図表3】。現在バイトテロを防ぐための取り組みを行っている企業は6割近く(57.9%)に達し、具体的な施策を聞いたのが【図表4】だ。
「正社員に対して、アルバイト教育に関する研修を実施」(31.7%)が最も多く、バイトテロ防止のために正社員の教育やシフトを見直す企業が多い。
一方で、「保護者に対して、バイトテロについて説明?理解促進を図る」(13.8%)と、一定数の企業で「オヤカク」をバイトテロ防止の重要なポイントにしていることもわかった【図表4】。
企業の3割、アルバイト採用でも「オヤカク」
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なったマイナビのキャリアリサーチラボ研究員の三輪希実(みわ・のぞみ)さんに話を聞いた。
――今回、アルバイト採用で初めて「オヤカク」を調査した理由は何でしょうか。
三輪希実さん 企業の人材獲得競争が激化している中で、「オヤカク」は企業が学生から選ばれるための施策の1つとなっています。人手不足が続くアルバイト採用市場でも人材獲得競争は激化していますから、アルバイト採用でもどうなのかと関心を持ちました。
なお、民法上では企業が18歳未満の未成年と雇用契約を結ぶためには保護者の同意が必要なため、今回は18歳以上の成人した学生(高校生・大学生)の親への連絡に限定して調査を行ないました。
――成人年齢が20歳から18歳引き下げられたにもかかわらず、企業の約3割が、いわゆる「オヤカク」を必要と考えているのはなぜでしょうか。昔は、学生もアルバイト先をいちいち親に相談しなかったものですが。
三輪希実さん 成人している学生であっても、契約に関する知識や社会経験が少ないため、採用する際のトラブルを防ぐために、親などの保護者の同意を必要と考える企業が多い結果になったと考えられます。
子どもの自由は尊重しつつも、保護者の同意を得ることは、親などが子どものアルバイト環境を把握する方法の1つとして有効です。違法な働き方やトラブルに巻き込まれることへの防止に繋がるといえるでしょう。
デジタル化が進む中で、求人サイトやSNSなどアルバイト探しの方法が多様化しています。闇バイトやブラックバイトの報道を見聞きし、学生自身も不安を感じて、親に相談する場面が増えています。
バイトテロ被害は企業だけなく、「悪ふざけ」学生も人生に傷
――なるほど。ところで、バイトテロ防止に取り組んでいる企業が6割もいるということは、それだけ深刻に受け止めているわけですね。
三輪希実さん 2024年に入ってからも、飲食店などの店内で不衛生きわまる動画が撮影、拡散されて問題となっています。アルバイト従業員が勤務時間中にスマホやSNSを使用することが可能な職場が52.1%と半数以上ありますから、リスクを懸念して、バイトテロ防止への対応を行う企業が多いと考えられます。
バイトテロの被害は企業だけはすみません。ほんの出来心の「悪ふざけ」と軽く考えた若い従業員の、その後の人生にも大きな影響を与えることになります。バイトテロ防止に取り組むことは、企業と従業員双方にとって重要だといえるでしょう。
――たしかにそのとおりですね。そこで、「オヤカク」に注目する企業がいるわけですが、はたして効果はあるのでしょうか。
三輪希実さん 企業がアルバイトの内定確認の連絡(オヤカク)の際に、親などの保護者にバイトテロについて説明して、理解促進に取り組むことは防止策の1つとして有効だと考えています。
子どもが社会人としてアルバイトを始める前に、一般常識やモラルに反する行為は「悪ふざけでは済まない」という事の重大さを理解させることは重要といえるでしょう。
アルバイト採用の際、「オヤカク」を行う企業は約3社に1社以上います。2022年から成人年齢が18歳に引き下げられ、学生が1人でアルバイト契約できることが増えていますが、「アルバイト先を決める時に、親の意見を参考にした」と答えた学生が約6割もいます。
「親の影響力」は依然として大きいといえます。
企業も親も、アルバイト採用時の「オヤカク」に注目を
――となると、バイトテロ防止の「オヤカク」効果、あなどれませんね。
三輪希実さん 新卒採用時の「オヤカク」は、主に内定辞退を防止するための企業が多いですが、アルバイト採用時の「オヤカク」はトラブル対策を目的とする企業が多い様子がみられました。
近年、バイトテロが問題になっているおり、多くの企業に「オヤカク」を注目してほしいと願っています。また、親の立場からも、ぜひお子さんの人生を考えた「オヤカク」に関心を持っていただきたいです。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)
【プロフィール】
三輪 希実(みわ・のぞみ)
株式会社マイナビ キャリアリサーチラボ研究員
2018年マイナビに新卒入社、就職情報サイト『マイナビ20XX』の営業に3年従事。現在、個人のキャリアや雇用のあり方に役立つ情報を提供する「マイナビキャ リアリサーチLab」で、主にアルバイトや派遣社員などの非正規採用領域における雇用や労働に関するさまざまな調査データやりポートの分析を行う。
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