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100円で売買する「空き家バンク」制度、魚津市が開始…無償譲渡にならず不動産業の仲介で「双方に安心感」

読売新聞 / 2024年9月13日 8時0分

 空き家の増加が問題となる中、富山県魚津市が空き家を100円で売買する制度「100円空き家バンク」を始めた。0円では当事者同士の「無償譲渡」になるが、価格がつけば「売買」になり、不動産業の仲介が可能だ。プロを交えた環境で、円滑に空き家を流動化させる。(吉武幸一郎)

安定性と継続性模索

 「当事者同士のやり取りだと不安を感じる人もいる。万が一のトラブル防止のために専門家が仲介すると、双方に安心感が生まれる」。魚津市都市計画課の松倉貴宏主査は制度の意義をこう説明する。

 市は2007年、「空家・空地情報バンク」を創設し、空き家対策を本格化させた。ただ、空き家は増加の一途をたどり、23年度には調査を始めた14年度以降で最多の1418軒に達した。

 そこで導入を模索したのが、上市町が22年度に導入した「0円空家バンク」だ。移住者にタダで空き家を譲渡するこの制度は反響を呼び、町によると8月末までに、21軒が譲渡契約・契約内定につながったという。

 魚津市がこの制度をそのまま導入せず、100円という価格を設定して売買にしたのは安定性と継続性を確保するためだ。無償譲渡の場合、職員は不動産の知識を深め、当事者間に入って助言や支援をすることが求められる。だが、市役所では人事異動が避けられず、プロに任せた方がよいと判断した。

8月に本格始動

 制度は〈1〉売り手が市に空き家を登録〈2〉市が買い手を募集〈3〉売り手と買い手が不動産業者を交えて契約――の順に進む。

 市は空き家の状態や登記簿を踏まえて売買に支障がないことを確認。内覧会や売り手と買い手が面談する機会を設ける。さらに買い手には「取得後に2人以上が住所を移す」などの要件を設け、登記費用や手続き費用名目で50万円を補助する。このほか、売り手には不動産業者への仲介費用名目で20万円を支給し、家財道具の処分代も補助する。

 制度は8月に本格始動した。市は今後、1か月に1軒のペースで物件を掲載し、買い手の募集を進める。村椿晃市長は「まだ使える空き家が放置されると、街の元気がなくなる。専門家の支援を受け、家を使ってほしい売り主と、市に暮らしたいという買い主をマッチングさせ、定住者を増やしたい」と意気込んでいる。

掲載第1号は木造2階建て

 100円空き家バンクへの掲載第1号は、魚津市本町に立つ築61年の木造2階建て住宅(延べ床面積97・51平方メートル、土地付き)。富山地方鉄道の電鉄魚津駅まで徒歩9分の好立地だ。

 売り手は市在住の男性(80)。長く貸家にしていたが、昨年10月から空き家になった。処分を巡り、解体すると約150万~200万円、売却すると100万円ほどの利益になることもわかった。

 対応に迷う頃、男性は姉から上市町の「0円空家」にまつわる話を聞いた。制度を使って他県から移住した人を会社で採用したという。「利益が得たいわけではない。せっかくなら、長く魚津に住んで愛着を持ってくれる人に売りたい」。そう思うようになった。

 男性は「取得希望者と面談でき、『この人に売りたい』と判断できるのが魅力。何より、不慣れな契約に不動産業者が入ってくれる」と喜ぶ。

 市は8月にこの家の買い手を募集。県外、市内の計3世帯が名乗りを上げ、現在、売買に向けた準備を進めている。

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