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嘆きの出張族、「1万円」では泊まれない東京のビジネスホテル…カプセルや郊外宿泊が常態化

読売新聞 / 2024年9月12日 17時0分

宿泊費の増額や実費化相次ぐ

 東京都内のビジネスホテルの宿泊料が高騰している。インバウンド(訪日外国人客)需要や物価高で、平均客室単価はコロナ禍前の2019年から1・5倍に跳ね上がっている。出張時に規定の宿泊費で泊まれるホテルが見つからず、都心から離れたホテルを探さざるを得ないビジネスマンも多く、宿泊費やその支給方法を見直す企業や自治体が相次いでいる。(岩島佑希)

あふれる訪日客

 東京都新宿区のビジネスホテル「ホテルグレイスリー新宿」は連日、外国人観光客であふれている。ロビーでは、スタッフが英語や中国語で、チェックアウトや手荷物の一時預かり業務に対応している。

 宿泊施設の平均的な客室稼働率は5~6割とされるなか、同ホテルの稼働率は8割を超えている。巨大ターミナルである新宿駅に近いことに加え、世界有数の繁華街・歌舞伎町のにぎわいを味わえるとSNSなどで人気となったことから、宿泊客のほとんどが外国人観光客だ。このためフロントスタッフには、外国語で対応可能な人材をそろえている。

 インバウンド需要を受けて宿泊料は、コロナ禍前より6割ほど上がっているという。同ホテル企画課は「価格に見合ったサービスを提供し、お客さまに質の高さを感じてもらえるようにしたい」と話す。

5年で1・5倍

 高騰したビジネスホテルの宿泊料は、国内では割高に見えるが、円安基調の恩恵を受ける外国人観光客からの予約は引きも切らない。さらに、人手不足による人件費の高騰や物価高を受け、ビジネスホテル全体の宿泊料は上がっている。東京都内や横浜市のビジネスホテルなどでつくる「東京ホテル会」によると、加盟する約260のホテルの平均客室単価(先月)は1万6556円。19年8月は1万804円だったので、この5年で1・5倍に高騰したことになる。

 都心のビジネスホテルの宿泊料高騰のあおりを受けているのは、地方から東京に出張するビジネスマンだ。民間の調査機関「産労総合研究所」(東京都千代田区)が23年7~8月に行った調査(回答171社)によると、社員が出張した際の「宿泊費」の平均額は1泊8606円で、都内のビジネスホテルの平均客室単価を下回っている。

自治体でも

 このため、出張時の宿泊費の規定を見直す企業も出ている。IT企業「リブセンス」は23年12月までの宿泊費の上限は1泊1万円だったが、24年1月からは、出張費の規定を改定し、1万3000円に増額した。同社の宮崎県にあるオフィスに勤める男性(29)は年に数回、東京都港区にある本社に出張している。これまでは、本社周辺で1万円以下のホテルを探すことは難しく、電車で1時間ほど離れたホテルに宿泊していたという。男性は「3000円引き上げられたことで、早期予約の割引などを使えば、都心部でも宿泊できるホテルを探すことができる」と喜ぶ。

 自治体でも同様の動きが広がっている。佐賀県は、職員が東京や大阪など都市部に出張した際の宿泊費は1万900円、地方は9800円と条例で定めている。超過した際は、領収書とともに、その地域で規定の宿泊費を下回る宿泊施設が見つけられなかったことを示す書類などを添付し、人事課と協議を行う必要がある。

 近年はこの協議にかかる業務負担が増大しているため、県は昨年6月から、1泊最大3100円の超過までは、協議なしで実費支給を認める運用にしている。

 佐賀県のほか、岩手県や沖縄県でも、宿泊費の実質的な増額措置を取っている。

 宿泊旅行業に詳しいニッセイ基礎研究所の安田拓斗研究員は「都心のビジネスホテルの客室単価は当面、下がることはない。東京に出張した地方のビジネスマンのなかには、安価なカプセルホテルを利用したり、都心から離れたホテルに宿泊したりせざるを得ない人が増えている。企業や自治体には宿泊費の規定見直しや出張内容の再検討が求められる」と指摘する。

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