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自民総裁選告示 日本の針路を大局的に論じよ

読売新聞 / 2024年9月13日 5時0分

◆国難克服へ何を守り何を改める◆

 国難とも言える少子化に歯止めがかかっていない。経済指標は改善基調にあるものの、豊かさを実感できているとは言い難い。安全保障環境は厳しさを増す一方だ。

 日本が抱える様々な課題にどう対処していくのか。各候補は政治理念や国家観を明らかにし、経済財政運営や社会保障、外交・安全保障政策について、説得力のある主張を展開してもらいたい。

 自民党総裁選が告示され、9人が立候補した。新総裁は27日に選出され、10月初旬に臨時国会で首相に指名される予定だ。

◆現行制度で最多の9人

 9人が出馬するのは、推薦人が必要になった1972年以降で最多だ。その分、各候補が唱えている政策は多岐にわたっている。

 その中には、思いつきのような構想が散見される。社会に重大な影響を及ぼす政策がいとも簡単に実現できるかのように語られているケースもある。

 政権中枢で政策決定に関与したにもかかわらず、政策をひっくり返すような発言もあり、不安を覚えざるを得ない。

 例えば、茂木敏充幹事長は、防衛力強化のための増税と、児童手当の拡充などに充てる保険料の追加負担をなくすと訴えている。その財源は、経済成長に伴う税収増で賄うという。

 それが可能ならば、なぜ現政権で実行しないのか。仮に今後、経済が成長したとしても、その増収分は別の政策に必要なはずだ。

 小泉進次郎元環境相は、労働者に関する解雇規制の緩和を主張している。大企業が人員を整理する場合、社員の学び直しや再就職支援を義務づけて、それを条件として解雇を容易に実行できる制度を導入するという。

 解雇規制の緩和は、経済界が長年、求めている労働市場改革だ。成長分野に人材を振り向ける狙いがあるとされるが、そうした制度を整えなくとも、若い世代は職場が変わることへの抵抗感が薄く、すでに転職は活発化している。

 それとは別に、本人の意思にかかわらず、企業側の都合で働く人の生活の糧を奪うことを安易に認めれば、社会不安が高まりかねない。職業生活が不安定化し、結婚や出産をためらう人が増えて少子化が進むことにならないのか。

◆夫婦別姓は必要なのか

 夫婦が結婚する際、同姓にするか別姓にするかを選べる「選択的夫婦別姓」の法制化も、論点の一つになっている。小泉氏が口火を切って導入を提唱した。

 別姓制度は、女性が結婚を機に夫の姓に改めることで不都合が生じているとして、経済団体などが法整備を求めている。

 ただ、夫婦が別姓を選んだ場合、子供は両親どちらかの姓となる。その場合は不都合はないのか。

 親子の姓が分かれれば、家族の一体感が損なわれ、子供の成長過程に支障を来す恐れも否定できない。親の視点だけで判断していい問題なのだろうか。

 河野太郎デジタル相と石破茂元幹事長も、選択的夫婦別姓に前向きだ。一方、高市早苗経済安全保障相と小林鷹之前経済安保相は、旧姓の通称使用を拡大すればいい話だとして、反対している。

 小泉氏は、選択的夫婦別姓など様々な改革を「圧倒的なスピードで決着をつける」とし、1年で断行すると述べている。

 だが、国民生活や社会に大きな影響を与える改革を時の勢いで推し進めるべきではない。改革の効果と弊害を慎重に検討し、幅広い合意を得ることが不可欠だ。

 改革すべき問題と、守るべき価値をどう分けるか。冷静に議論し、誤りなき道を選びたい。

 林芳正官房長官は、少子化対策として育児休業給付金の拡充を掲げている。給付を唱えるのなら財源の議論を避けてはなるまい。

 上川陽子外相は「所得再分配を確立して中間層を広げる」と唱えている。加藤勝信元官房長官は「国民の所得倍増」を掲げた。問われているのは、そうした目標を実現するための具体策だ。

◆外交政策が問われる

 戦後79年間、日本は平和を享受してきたが、中露に加えて北朝鮮が核を保有するなど、日本周辺の安全保障環境は悪化している。国際秩序も崩壊の危機にある。

 そうした状況にもかかわらず、9人の候補が外交・安保政策のあり方について、十分に発信しているとは言えない。

 将来にわたって日本の平和と安全を守り続けるには何が必要か。国際社会に安定を取り戻すために、どのような役割を果たすべきか。議論を深めねばならない。

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