「テロ撲滅」「独裁者」評価は功罪相半ば…長期間収監されたフジモリ元大統領、最期まで権力に執着
読売新聞 / 2024年9月13日 6時50分
【リオデジャネイロ=大月美佳】11日に死去した南米ペルーのアルベルト・フジモリ元大統領は、その評価が功罪相半ばする指導者だった。経済再建や治安改善に手腕を発揮した一方、強権的な政治姿勢は「独裁者」との批判を呼んだ。在任中の人権侵害で長期間収監されながら、最期まで権力に執着し続けた。
「フジモリ(元大統領)は平和の英雄だ」。ペルーからの報道によると、フジモリ氏が暮らした同国首都リマにある、長女ケイコ氏の自宅前には11日、支持者らが集まって死を悼んだ。
フジモリ氏は大統領在任中の約10年間、市場開放を進め、混乱した経済を立て直した。道路や水道などを整備し、貧困層を中心に今も根強い人気がある。
支持者らが強調する同氏の業績は、テロ対策による治安改善だ。1980年代のペルーは左翼ゲリラの活動が活発で、爆破テロなどで多くの市民が犠牲になった。90年に初当選したフジモリ氏は徹底的な掃討作戦を展開、ゲリラをほぼ壊滅状態に追い込んだとされる。
96年に起きた左翼ゲリラのトゥパク・アマル革命運動(MRTA)による日本大使公邸人質事件では服役囚の釈放要求を拒否。特殊部隊を突入させて人質の大半を救出した。人質となったペルーの旅行会社社長、津村光之さん(72)は「テロの撲滅は彼でなければできなかった。感謝している」と振り返った。
ただ、テロ対策は人権侵害も引き起こしていた。92年に労働組合指導者だった父を殺害されたインディラ・ウィルカ元国会議員はインスタグラムに「殺人者で、世界で最も腐敗した独裁者の一人が死亡した。1分間の黙とうでさえも完全に拒否する」と投稿した。
フジモリ氏は、左翼ゲリラ掃討作戦中の特殊部隊が農民や学生ら6人を殺害した事件の公判が続いていた。憲法停止や国会閉鎖で自身に権力を集中させ、側近による野党議員の買収工作も発覚するなど「負のイメージ」がつきまとった。
長女のケイコ氏は「人民勢力党」の党首を務め2011年以降、大統領選に3回出馬した。いずれも落選したが、フジモリ氏は晩年もペルー政界に一定の影響力を保ち続けた。
23年12月に高齢や病気を理由に釈放されて以来、自らの功績をたたえ、自らを正当化する発言が目立ったフジモリ氏。今年7月には次期大統領選に立候補する意向を表明した。
その直前、地元紙に宛てた手紙にはこう記されていた。「すべてのペルー人のために再び働きたい」
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