イグ・ノーベル賞に「哺乳類が肛門を使って呼吸する仕組み」…日本の研究者、18年連続受賞
読売新聞 / 2024年9月13日 7時0分
【ケンブリッジ(米マサチューセッツ州)=冨山優介】人々を笑わせ、考えさせる優れた研究を顕彰する「イグ・ノーベル賞」の今年の受賞者が12日(日本時間13日)、発表された。哺乳類が肛門を使って呼吸する仕組みを医療応用に結びつけた、武部貴則・東京医科歯科大教授(37)(再生医学)ら日米計11人の研究チームが「生理学賞」を受賞した。日本の研究者の受賞は18年連続となる。
イグ・ノーベル賞はノーベル賞のパロディー版で、1991年に創設された。米科学誌が主催している。
2016年、京都大大学院医学研究科の学生だった岡部亮さん(45)(現・築地在宅診療所院長)が、同科講師で指導教官だった芳川豊史さん(52)(現・名古屋大教授)と肺を人工的に作製できないか武部さんに相談し、共同研究が始まった。
研究を進める中、ドジョウが腸で呼吸する仕組みに着目し、哺乳類での応用を考えた。低酸素状態にしたマウスやブタの肛門から酸素を豊富に溶け込ませた化学溶液を注入すると、腸を通じた呼吸によって呼吸不全の症状が改善した。成果は2021年に国際科学誌に掲載され、注目を集めた。
チームは、主人公らが特殊な液体の中で呼吸する描写がある人気アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」にちなみ、開発した手法を「EVA法」と命名した。
現在、東京医科歯科大発ベンチャー「EVAセラピューティクス」(大阪市)などが、低体重で生まれ、呼吸が困難な赤ちゃんの低酸素状態を治療する方法として、実用化のための治験に取り組んでいる。
武部さんは「至って真面目な研究なので受賞の連絡を受けた時は驚いたが、新しい治療法の開発が進んでいることを多くの人に知ってもらうきっかけになれば」と期待を込める。
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